研究課題/領域番号 |
23590480
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研究機関 | 兵庫医科大学 |
研究代表者 |
山田 直子 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (10319858)
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研究分担者 |
寺田 信行 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (50150339)
中正 恵二 兵庫医科大学, 医学部, 教授 (00217712)
大山 秀樹 兵庫医科大学, 医学部, 准教授 (90280685)
山根木 康嗣 兵庫医科大学, 医学部, 講師 (00434944)
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キーワード | インターロイキン / 転移 / 骨肉腫 |
研究概要 |
IL-18が、NKおよびT細胞の殺細胞活性を増強することにより抗腫瘍効果を示すことは、我々の研究を含めた多くの研究により明らかにされている。我々は、NKおよびT細胞を欠く状態のマウスに、高肺転移株のマウス骨肉腫細胞(LM8細胞)を尾静脈から移植し肺転移を起こさせる系を用いて、IL-18の肺転移抑制に及ぼす効果を調べた。 この実験によりIL-18は、抗腫瘍効果とは無関係にLM8細胞の肺転移を抑制する事および、IL-18の肺転移抑制作用は、LM8細胞に対するIL-18の直接作用ではなく、宿主細胞へのIL-18の作用を介する作用である事が明らかとした。さらに、細胞遊走能を調べる傷つけアッセイ法を用いて、IL-18投与マウスの血清が、LM8細胞や他の転移能をもつ腫瘍細胞(Lewis lung carcinoma、B16 melanoma)の遊走を抑制する事を報告した(Nakamura et al. 2006, J Cancer Immunol Immunother)。このIL-18投与マウスの血清中に存在する腫瘍細胞遊走抑制因子を同定する事が、本研究の目的である。 これまでに限外濾過フィルターによる血清画分を用いた解析を傷つけアッセイ法を用いて調べた結果、分子量1~3万の分画に細胞遊走抑制活性があることを明らかにした。その分子量をもとにELISA法、Bio-Plex法、二次元電気泳動とTOF-MSによる質量分析法、抗体アレイ法を用いた解析の結果、IL-18投与と非投与マウスの血清を比較して発現量の異なるタンパクがいくつか見つかった。現在それらのタンパクを直接細胞培養液に添加して転移抑制効果を検討しているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画は概ね順調に進んでいる。いくつかの転移抑制因子の候補となるタンパク質が見つかったので、このタンパクの転移抑制活性を調べているところである。しかしTOF-MS装置が壊れたため、二次元電気泳動からタンパクを同定することはできなくなり、抗体アレイなど他の方法を利用して研究を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
①転移抑制活性の確認:これまでに見つかった転移抑制因子の候補となるタンパク質に転移抑制活性があるかどうかをインベージョンアッセイにより解析する。②抗体アレイ:抗体アレイによる解析を行いさらなる転移抑制因子の候補タンパクを検索する。③質量分析:マウスの血清から転移抑制因子を含む分画の抽出行い、2次元電気泳動によるスポットの回収を行う。回収したタンパクは受託による質量分析を行い、さらに転移抑制因子を検索する。④転移抑制因子産生細胞の同定:転移抑制活性が他の臓器に比べて血清中で高いことから、マクロファージ、T細胞、NK細胞等を培養した培養液中に転移抑制因子が分泌されている可能性を検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
細胞培養系で転移抑制活性を確認するため、転移抑制因子の候補となるタンパクを購入することに多くの費用が必要である。その他に必要な消耗品費は①培養器具:浸潤能を評価するためのアッセイ系に必要なトランスウェル(HTS FluoroBlock Insert, FALCON) を含むディスポの培養器具。②濃縮透析用品:限外ろ過フィルターや透析フィルム。③試薬:腫瘍細胞遊走抑制因子を同定するための抗体、ELISA kit、抗体アレイ等。更に学会発表への旅費、論文作製のための費用を必要とする。
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