研究課題/領域番号 |
23590482
|
研究機関 | 独立行政法人国立がん研究センター |
研究代表者 |
関根 茂樹 独立行政法人国立がん研究センター, 研究所, ユニット長 (10321879)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | Dicer / miRNA / 肝細胞がん |
研究概要 |
マウスDicer欠失肝細胞および肝細胞がんにおける遺伝子発現およびエピジェネティックな異常の解析を行う目的で、Dicer欠失肝細胞で過剰発現しているDlk1-Glt2、Igf2-H19領域の解析を進めている。Bisulfite変換したDNAを用いて標的領域を増幅後、クローニング・シークエンシングを行い、Dicer欠失肝細胞、および肝細胞がんにおいて、この領域遺伝子の発現調節に関わると考えられる領域のメチル化状態を検索をおこなっている。これまで検索した領域においては、明らかなメチル化状態の異常は指摘できていないが、対象領域を広げて、継続して検索を行う。 Dicerの肝細胞における機能解析のため、培養系を用いた解析は有用な手法となり得るが、Dicer欠失肝細胞は高頻度にアポトーシスを起こすため、細胞培養を行う事が難しい。このため、Dicerを欠失した肝細胞がんから細胞株を樹立する事で、機能解析を行う事が可能な培養系の樹立を試みた。本年後は腫瘍からの直接の培養を試みたが、持続的な培養を行う事は出来なかった。これまでの検討から、Dicer欠損を示す肝細胞癌の多くが脂肪化を示している事が、その原因の一つと考えられた。今後、免疫不全マウスを用いたxenograftの作成の可能性を考慮する。 ヒト腫瘍で報告されているDicerの1アレル欠失が肝細胞がんの発生に与える影響を解析するため、化学発がんモデルによる腫瘍形成の実験に必要な遺伝子改変マウスの繁殖を開始している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Bisulfite変換を用いた解析に関して、これまでに経験のない解析であったため、やや時間がかかったが、現在は安定して解析が可能になりつつある。Dicerを欠失した肝細胞がんから細胞株を樹立すする試みは今のところ成功していないが、化学発がんモデルによるDicerの1アレル欠失が腫瘍形成に与える影響の解析に関連して得られると期待される腫瘍サンプルを用いることで、今後より効率よく進める事が可能と考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
化学発がんモデルによるDicerの1アレル欠失が腫瘍形成に与える影響の解析は、生体内での腫瘍発生過程の解析を目的としており、ヒト腫瘍のモデルとなる可能性があることから、本研究の中で主要な部分を占める。これに必要なマウスの繁殖も進んでいることから、本年度はこの研究を中心に進める。昨年度、肝細胞特異的Dicerノックアウトマウスに発生する肝細胞がんの培養が確立できなかったが、化学発がんモデルで腫瘍が効率よく形成されれば、これを用いてより効率的に実験が進められる可能性があると考える。また、マウスDicer欠失肝細胞におけるエピジェネティックな異常の解析を引き続き進める。
|
次年度の研究費の使用計画 |
主に遺伝子、エピジェネティックな異常の解析に関わる消耗品、およびマウスの維持管理にかかる費用を中心として使用する。学会および論文などの関連する成果発表にも一部用いる。
|