研究課題/領域番号 |
23590483
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研究機関 | 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所 |
研究代表者 |
飯尾 明生 愛知県心身障害者コロニー発達障害研究所, その他部局等, その他 (80344349)
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キーワード | microRNA / 癌 / プロモーター / DDX6 / P-body |
研究概要 |
本研究は、miR-143/145が多くの癌及び疾患で発現低下している理由を明らかにし、外来性miR-143/145の核酸医薬としての臨床応用やバイオマーカーとしてのエビデンスの蓄積、内在性miR-143/145の発現制御を標的とした医薬品の開発を目的としている。本年度は、転写後制御機構を中心に解析を行った。 NCR143/145が、多くの癌細胞株でプロモーター活性はありながら、ほとんどRNAが検出できないほど発現レベルが低いことから、RNAの不安定性が考えられた。そこで、様々なRNA結合タンパク質やRNA分解酵素をsiRNAを用いてノックダウンすることにより、NCR143/145の発現が変化する遺伝子を探索したところ、DDX6、DCP1A及びXRN1の関与が明らかとなった。ヒト胃癌検体を正常と比較すると、他の多くの癌で報告されているように、有意にDDX6の発現が亢進していることがわかった。DDX6やDCP1Aは翻訳調節やRNA分解を行うP-bodyの主要構成要素である。そこで、cycloheximideによりP-bodyを消失させたところ、NCR143/145 RNAが増加し、逆にLPSによりP-bodyを増加させるとNCR143/145 RNAが減少することがわかり、癌ではP-body内のDDX6、DCP1A及びXRN1を介してNCR143/145 RNAの分解が促進され、その結果、miR-143/145が減少すると考えられた。そこで、この分解がどのようなメカニズムで進行するのか検討するため、RNA-IP、DDX6変異体を用いた機能阻害、Leptomycin Bによる核外移行阻害を行った結果、DDX6は核に移行し、スプライシングを受けていないNCR143/145を積極的に核外にリクルートし、P-body内でdecappingを介して分解を促進していることがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度、所属研究機関の閉鎖作業に伴い、やむなく廃棄した研究試料の再準備や、研究のセットアップに時間がかかったが、再スタート後は論文の投稿、再投稿の準備等行い、年度内に概ね完了した。
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今後の研究の推進方策 |
25年度は、NCR143/145の転写後発現制御に関わる分子の解析を中心に行う。具体的には、RNAの分解、保護に関わるRNA結合タンパク質、RNAの核貯留、核外移行に関わる因子、RNAの修飾に関わる因子について、RNA-IP法やsiRNAノックダウン、変異体等の強制発現を行い、NCR143/145の発現制御との関連について検討する。また、これらの因子が、癌や各種病態(虚血、酸化ストレス、炎症など)で機能がどうなっているのか、発現や活性(リン酸化、アセチル化、ユビキチン化など)を調べ、NCR143/145及びmiR-143/145の発現制御と病態との相関について検討する。さらに、本研究で明らかになったNCR143/145発現制御メカニズムを標的とした発現調節活性を有する機能性成分のスクリーニングを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度は、細胞培養、Westernblot、Real-time PCR、ルシフェラーゼアッセイなどに用いるプラスチック器具、細胞生物学用試薬、生化学用試薬、分子生物学用試薬など消耗品費として73万円、成果発表用の学会旅費に10万円、論文校正、投稿料などのその他に10万円の計93万円を予定している。
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