研究課題/領域番号 |
23590486
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
平山 謙二 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (60189868)
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研究分担者 |
菊池 三穂子 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 講師 (40336186)
シュアイブ モハッマドナシル 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助教 (30535745)
柳 哲雄 長崎大学, 熱帯医学研究所, 助手 (10174541)
上村 春樹 長崎大学, 熱帯医学研究所, 講師 (60184975)
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キーワード | シャーガス病 / 遺伝子導入原虫 / クルーズトリパノソーマ / ワクチン / マウスモデル |
研究概要 |
クルーズトリパノソーマ感染症であるシャーガス病は、毎年十万人が幼小児期に罹患しそのほとんどが、慢性感染症へと移行する。現在15歳以下の小児を対象にベンズニダゾールによる治療プログラムが行われているが、副作用も強く治療効果も十分ではない。本研究ではこの慢性感染症に移行した患者の新しい治療法創出を目的とする。すなわち、(1)ワクチンによる細胞内寄生病原体に対する免疫賦活効果、(2)上記ワクチン効果によるベンズニダゾール投与量の軽減について検討する。2年目のH24年度は以下の成果をあげた。1. 慢性感染マウスの作出(柳、菊池、平山)6週令雌のC57BL/6 マウスに培養感染型原虫を腹腔内投与し、特に慢性感染モデルを作出することができた。慢性期のマウスにおける感染原虫を末梢血および肝、心においてギムザ染色法により顕微鏡下で検出した。また初年度に確立したPCR法による定量的な観察法を用いて治療効果判定に資するレベルの感度を得ることができた。ワクチン後のチャレンジ感染の予備実験を完了し、DNAワクチンの応用実験を行った。2. 遺伝子導入原虫の作製(上村、柳)上村によりすでに赤色蛍光遺伝子を遺伝子導入し遺伝子導入原虫株の作成を試みたが、原虫株が安定せずいまだ安定的に遺伝子発現する株を得られていない。25年度中にイメージング実験を行う予定である。3. DNAワクチンの調整(シュアイブ、上村、菊池、佐々木)DNAvaccineを調整はTulahuen株由来のTcG1、TcG2、TcG4遺伝子cDNAをpVAX 200DESTに組み込んで作成し、佐々木らのナノボールと称するPEIとγPGAにより静電的に形成する2重膜カプセル(直径約100ナノメーター)でコーティングしたものをマウスの腹腔に3週間おきに3回免疫した。得られた血清は、原虫祖抗原を用いたELISA法により十分な抗体価を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
感染モデルマウスの作出条件について、ほぼ完成し、さらに感染後2週間における再現性の高いPCRによる原虫レベルの測定系を確立した。慢性感染したマウスの各臓器からDNAを抽出し、ミニサークル、染色体DNAのプライマーによる定量的なPCRを行い、心臓に局在した原虫の感染レベルを測定する系も完成した。予定したDNAワクチンの免疫原性も確認し、最終年度の複合実験に向けて順調に実験系の準備が進んでいる。以上のことから、3年目のワクチンおよび治療薬の相乗効果の検定に向けてほぼ計画通りに実験が進捗していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の計画は赤色蛍光遺伝子導入原虫の作出以外は達成されたので、DNAワクチンを免疫したのちに、通常のTulahuen株を用いてチャレンジ感染を行い定量PCRを用いてワクチン効果を検定する。また赤色原虫ができ次第全身スキャン法による蛍光イメージング法を行い、感染状態を全身的に観察、さらに生存したまま長期に観察する。ベンズニダゾールの経口投与による原虫感染の治療モデルを並行して行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
遺伝子導入原虫のイメージング実験に30万円、定量PCR法による薬剤治療、およびワクチン効果の評価に40万円を使用する予定である。その他論文発表に10万円の支出を予定している。
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