研究課題
[目的]ヒトマラリア感染において免疫記憶が成立しにくいことが報告されている。本研究では、免疫記憶が成立しにくい理由の一つとして記憶細胞の二次応答(再活性化)が抑制されている可能性を検討し、そのメカニズムを明らかにする。[具体的内容]B6 マウスにナイーブOVA特異的CD8+T (OT-I) 細胞と記憶OT-I細胞を1:1の比率で養子移入し、人工抗原OVA組換えマラリア原虫あるいはOVAリステリアを感染させる。感染から数日後、移入したナイーブOT-I細胞と記憶OT-I細胞の増加をそれぞれ一次応答と二次応答として解析する。OVAマラリア感染中は記憶OT-I細胞の二次応答(増加)は脾臓、リンパ節、骨髄、脳、肝臓、血中など様々な臓器組織において一次応答より弱かった。一方、対照として用いたOVAリステリア感染では記憶OT-I細胞はナイーブOT-I細胞より増加した。またOVAマラリア感染マウスにFTY720(リンパ球の移動を阻害する薬剤)を投与しても上記の組織において記憶OT-I細胞の二次応答は回復しなかった。これらの結果からマラリア感染中、記憶細胞の二次応答は全身的に抑制されている事が示唆された。さらに、OVAマラリア感染中、二次応答している記憶OT-I細胞上には抑制性レセプターであるPD-1 およびLAG3が高発現していた。この結果から、抑制性レセプターから負のシグナルが入る事が記憶細胞の二次応答が弱い原因の一つである可能性が示唆された。[意義、重要性]マラリア感染中、記憶T細胞の二次応答が弱いという事は、感染やワクチン接種により獲得した免疫記憶が無意味になるかもしれないことを示唆している。この二次応答が弱い原因を突き止めれば、その原因を回避する方法を提案する事で、マラリアワクチンの効果を十分に発揮させるために必要な技術開発に貢献し、さらにはマラリア制圧への糸口になると考えられる。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した内容の一部を論文として発表できたため。
昨年より記憶細胞の二次応答や遊走に関する論文がいくつか報告されたため、これに伴い若干研究計画に変更を加える予定である。記憶細胞の二次応答抑制メカニズムとして以下を検討する。(1)感染の種類により抗原提示細胞の種類が違う可能性、さらにマラリア感染ではその抗原提示細胞の機能が減弱あるいは細胞死を起している可能性を調べる。(2)マラリア感染マウスとリステリア感染マウスの脾臓やリンパ節におけるナイーブ細胞と記憶細胞の局在を免疫組織染色を用いて調べる。この解析結果により、マラリア感染により記憶細胞の局在性変化した事が原因で二次応答が減弱したのかが明らかとなる。
消耗品1,645,362(マウス購入及び飼育800,000円、抗体.試薬645,362円、培養試薬100,000円、プラスチック製品100,000円)旅費 200,000円(国内学会2回/年)その他100,000円(論文投稿)合計 1,945,362円
すべて 2013 2012 その他
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (2件)
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10.1111/1348-0421.12024
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