研究課題/領域番号 |
23590489
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
菊池 三穂子 長崎大学, 国際連携研究戦略本部, 講師 (40336186)
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研究分担者 |
平山 謙二 長崎大学, 熱帯医学研究所, 教授 (60189868)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 日本住血吸虫 / 肝線維化症 / 虫卵抗原 / 免疫応答 / 動物モデル / ミニブタ |
研究概要 |
日本住血吸虫感染後、数年を経て発症する日本住血吸虫性肝線維症に対する有効な治療法、治療薬はない。しかしながら、フィリピンの浸淫地においては、未だ多数の患者が存在する。住血吸虫症では感染後、虫卵抗原により強力にTh2 タイプの免疫応答性に誘導されることが知られている。肝線維化症は、T 細胞応答性に依存しTh2 タイプのサイトカイン(IL-4, IL-13)産生により線維化が誘導される。虫卵周囲に形成される結節は肝細胞の壊死を防ぐための生体防御反応であり、これを完全に抑制することは逆に重症化を招くことになりかねない。この他にも、虫卵分泌抗原には免疫応答を抑制する機能をもつ蛋白の存在も示唆されているが、分子としての本態は明らかになっていない。虫卵由来の抗原に関する分子レベルでの解析は未だ不十分である。これまでの住血吸虫症研究はマンソン住血吸虫症が主流となっており、この2 種は近縁ではある本研究においては、感染動物モデルを用いて肝線維化症の原因となる住血吸虫 虫卵由来の抗原の機能を解析することにより重症化阻止ワクチン、あるいは有効な治療法の開発を目指して研究を推進する。マウスあるいはミニブタ住血吸虫感染動物モデルを用いて、シグナル配列トラップ法によりクローン化した約20種類の組み換え分泌虫卵抗原に対する免疫応答性、組み換え分泌虫卵抗原に対するモノクローナル抗体投与による虫卵結節形成の経過観察などを行い、より詳細な検討を行い肝線維化症重症化に寄与する虫卵由来抗原の機能を明らかにする。さらに、ヒトを対象として得た結果を動物モデルにフィードバックし、詳細な比較検討を行うことにより、肝線維化症の治療法開発を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
予定していた組み換え蛋白10種のうち、必要量の精製が可能であったのは3種で、3種は哺乳細胞系での発現が確認できなかった。残り2種については、発現量が少なく必要量を得るのに難しいと判断されたため、3種類についてのみ解析を始めた。組み換えタンパクの作成に手間取ったため、実験全体の進行度がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
日本住血吸虫感染実験モデルとして感染実験を行うミニブタは、感染実験を数度繰り返し行い、肝線維化症を発症する経過を腹部超音波診断装置を用いて観察を行い、定期的に抹消血リンパ球を採取し各種抗原に対する免疫応答性についてモニタリングし、感染を1年間後に解剖し肝臓の組織学的検査を行う。マウスは同様に日本住血吸虫を感染させ、コントロール群(通常感染)、感染後に虫卵が産生される時期に組み換え分泌虫卵抗原に対するモノクローナルを投与し、投与群間での肝臓虫卵結節形成の比較、T 細胞のモノクローナル抗体に対する免疫応答性、及び投与効果について検討する。これらの結果を基に、分泌虫卵抗原が肝線維化症に寄与する機能について検討する。BALB/c マウス(20匹)に感染実験(セルカリア 30隻)を行い、感染後4 週目ぐらいから、感染群(10 匹)と非感染群(5 匹)にモノクローナル抗体を週毎に投与する(残り10 匹はモノクローナル抗体を非投与群)。感染後感染後10週目に灌流を行い、虫体の回収、脾リンパ球、肝臓組織などの試料を得る。肝臓組織切片を作成し、肝臓内虫卵結節形成の指標となる各種マーカーを検出し、肝線維化の程度を数値化し評価する。
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次年度の研究費の使用計画 |
マウス・ミニブタの住血吸虫感染自然経過の観察 平成23 年度と同様 100 万マウス・ミニブタ免疫応答反応性研究用試薬類(FACS 用mAb、サイトカイン定量試薬、プラスチック消耗品等、mRNA 定量試薬等) 70 万円
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