研究課題
マラリアワクチン開発において重要とされることは、新たな防御抗原を発掘することとその抗原の免疫原性を高めることである。本研究課題ではその取り組みの一環としてワクチン抗原をB細胞へ標的化することでワクチン抗原の免疫原性を向上させることが可能か検証してきた。特に、平成23年度と24年度は、「三部構成免疫賦活システム(TIPS)」の開発を進めてきた。このTIPSは、本来、免疫原性の低いマラリア原虫由来のワクチン候補抗原をコアモチーフ(コイルドコイル形成分子)と標的リガンドから構成される融合分子へ搭載することで、抗原の低免疫原性を克服できるシステムである。すなわち、B細胞標的化はマラリアワクチン抗原の低免疫原性克服に重要な要素であることが分かってきた。マラリアワクチンのようにリコンビナントタンパク質を用いる必要性が高い場合において、自然免疫活性化のためのアジュバントや今回、TIPSで証明したような抗原提示細胞(今回の場合B細胞)標的化に加え、抗原の反復整列化は重要な要素であると考えている。最終的にはリコンビナントタンパク質性のワクチンを実用化していく上で、これら3要素は重要である。平成24年度までは、マラリア伝搬阻止ワクチン抗原(Pvs25)を用いてTIPSの機能解析を進めてきたが、平成25年度はマラリアの生活環の中でもメロゾイト期特異的に発現する抗原(MSP1)をTIPS化することでその機能解析を実施した。その結果、Pvs25の場合同様、高い発症防御機能が認められた。また、ウイルス感染症のモデルとして日本脳炎を用いてTIPSの機能を検証したところ、マラリアワクチンの場合同様、TIPS化することで高い感染防御能が認められた。これらの結果は、B細胞を標的化することで、リコンビナントタンパク質性のワクチン候補抗原の機能性が高まることを示唆しており、今後のマラリアをはじめとするワクチン開発に重要な所見を与えるものであると考えている。
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http://www.tbc.u-ryukyu.ac.jp/ja/