研究課題
低栄養及び微量元素やビタミン類の欠乏による免疫機能低下は、展途上国における小児・妊婦の感染症対策おける喫緊の課題である。特に亜鉛は細胞分裂や細胞活性等の生物学的機能に必須であることから、成長や発達、免疫機能の維持に重要な役割を担っている。WHOのマラリアの制圧プログラムでも一部地域で亜鉛製剤の投与が試みられたが、その評価は分かれている。本研究課題では、亜鉛欠乏飼料給餌マウスにネズミマラリアを感染させその免疫動態を解析することにより、フィールドでの研究を検証すると共に、そのメカニズムを追求した。本研究では以下の成果を得ることができた。1. 亜鉛欠乏マウスでは血中亜鉛濃度が約7%まで低下したが、70日後でも生存できた。2. マラリア感染の亜鉛欠乏マウスではマラリア原虫を排除できなく、約20日で死亡した。3. マラリア原虫の排除を担うマクロファージは脾臓と肝臓内で共に増加したが、その貪食機能に差は見られなかった。4. 免疫応答を制御するCD4+T細胞数は脾臓、肝臓内で共に優位に減少していたが、CD8+T細胞数の変動は見られなかった。5. 血中サイトカインの測定では、Th1免疫応答を担うIFN-γレベルの低下は認められなかったが、Th2応答のIL-4レベルは感染中期から有意に低下していた。6. 感染後期におけるマラリア原虫の排除に重要な原虫特異抗体の上昇は見られなかった。7. 生体の恒常性は維持の指標となる電解質バランスの異常は見られなかった。以上の結果から、亜鉛欠乏マウスでは感染初期の自然免疫機構の機能低下は見られないが、獲得免疫機構として重要な原虫排除を担うマラリア原虫特異抗体の産生能が低下していることが示唆されたことから、原虫特異抗体を感染マウス血清より分離・精製し、その移入実験に継続して取り組んでいる。
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