研究課題/領域番号 |
23590493
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
小林 富美恵 杏林大学, 医学部, 教授 (20118889)
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研究分担者 |
新倉 保 杏林大学, 医学部, 助教 (30407019)
井上 信一 杏林大学, 医学部, 助教 (20466030)
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キーワード | マラリア / PAM / マウスモデル |
研究概要 |
本年度は、マラリア流行地に住む女性が妊娠し、マラリア原虫に感染した場合の症状を反映する妊娠マラリアモデルを樹立し、妊娠マラリアにおける母体・胎児の病態と胎盤病理について解析することを目的とした。 自然治癒型マウスマラリア原虫Plasmodium berghei (Pb) XATに感染後治癒したマウスは、マラリア原虫に対する防御免疫を獲得する。そこで本研究では、マラリア流行地に住む女性が妊娠し、マラリア原虫に感染した場合の症状を反映する妊娠マラリアモデルを樹立するため、Pb XATの感染・治癒によりマラリア原虫に対する免疫を賦与したマウスを交配させ、交配後1~2日目に致死型マウスマラリア原虫Pb NK65を感染させた。 マラリア原虫に対する免疫を賦与した非妊娠マウスにPb NK65を感染させると、原虫血症は低レベルで推移し、最終的にマウスは自然治癒した。一方、マラリア原虫に対する免疫を賦与した妊娠マウスにPb NK65を感染させると、マウスは妊娠後期 (感染後16-18日目) において原虫血症の増悪および貧血を示すことを見出した。この妊娠マウスにおいて、非感染の妊娠マウスと比較して死産仔が高率に認められ、胎盤にはヒト妊娠マラリアの典型的な病態である多数の感染赤血球の蓄積と胎盤絨毛構造の異常が認められた。さらに、この妊娠マウスは妊娠後期に脂肪の蓄積を伴う重度の肝障害を発症することを見出した。これらの結果から、本年度樹立した妊娠マラリアのモデルは、マラリア流行地に住む女性が妊娠し、マラリア原虫に感染した場合の症状を反映する適切なモデルであると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
1. Pb XATの感染・治癒によりマラリア原虫に対する免疫を賦与したマウスを交配させ、交配後1~2日目に致死型マウスマラリア原虫Pb NK65を感染させることで、マラリア流行地に住む女性が妊娠し、マラリア原虫に感染した場合の症状を反映する妊娠マラリアモデルを樹立できた。 2. 流行地の女性が妊娠することにより、マラリア原虫に対する抵抗性が著しく抑制され病態が重症化することが、本研究の妊娠マラリアモデルによって初めて明確に示された点で、本年度の目的は充分に達成された。 3. 昨年度作出した緑色蛍光タンパク質を発現するPb XATおよび赤色蛍光タンパク質を発現するPb NK65を使用することにより、Pb NK65感染後にPb XATが再燃しないこと、Pb XATは胎盤に蓄積していないことが示された。また、Pb NK65感染後に母体から胎児への垂直感染が起こらないことが示された点で本年度の目的は達成された。
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今後の研究の推進方策 |
1. 本研究で樹立した新規妊娠マラリアモデルで認められた肝障害の発症と宿主免疫応答との関係を明らかにするために、血漿中サイトカインについて解析する。 2. 妊娠によるマラリア原虫に対する抵抗性の低下の詳細を明らかにするために、妊娠時の細胞性免疫応答および液性免疫応答を解析する。 3. 妊娠時のマラリア原虫複合感染による母体と胎児・胎盤への影響について解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
妊娠マラリアを解析するためのマウスと、宿主免疫応答・炎症反応について解析するための抗体・試薬および培養器具の購入を計画している。
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