研究課題/領域番号 |
23590497
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
石渡 賢治 東京慈恵会医科大学, 医学部, 准教授 (00241307)
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キーワード | 腸管免疫 / 腸管寄生虫感染 / 慢性感染 / 樹状細胞 |
研究概要 |
本研究の目的は、マウス感染モデルを用いて消化管寄生線虫による慢性感染の成立メカニズムを明らかにすることである。具体的には、急性に感染が終息するNippostrongylus brasiliensis(Nb)感染と、感染経過が慢性に移行するHeligmosomoides polygyrus(Hp)感染における樹状細胞とT細胞の応答を比較することから、慢性感染の成立に寄与する細胞と分子、関与するサイトカインの特定、およびそれらを誘導する寄生虫成分を探索する。平成24年度は、フローサイトメトリーによる解析を詰め、いくつかの問題点の解決に努めた。 Nb感染では腸管への定着後1日で腸間膜リンパ節の樹状細胞に一過性の活性化を認め、引き続きCD4T細胞の活性化を認めたが、Hp感染では樹状細胞の一過性の活性化を認めなかった。逆に、Nb感染で活性化後に認める樹状細胞上の抗原提示分子の発現低下が、Hp感染ではより早期に認められた。さらに、抑制性のシグナルを伝達するPD-1分子のT細胞上での発現を早期に認めた。Nbは腸管粘膜上に定着するが、Hpは一旦筋層に侵入して発育した後に腸管腔に戻り、粘膜上に定着する。筋層のHpに対する樹状細胞応答と、樹状細胞上の抗原提示分子の発現低下が腸間膜リンパ節あるいは腸管固有層のどちらで誘導されているのかを明らかにするために、固有層における樹状細胞応答の解析に着手した。一方、Nb感染において、活性化した樹状細胞の亜群をそれぞれフローサイトメトリーで分取し、既感染CD4Tリンパ球(メモリーT細胞)に対する増殖促進能を調べ、感染を終息させる免疫応答に寄与する樹状細胞の同定を行った。 本研究成果は、感染の終息/維持に繋がる経路を明らかにする点で粘膜免疫学へ大きく貢献しうると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
1)Hp感染に対する樹状細胞応答を、所属リンパ節で明らかにすることができなかった。これは、筋層での樹状細胞応答が所属リンパ節まで伝わらず、筋層局所で発現し、調節されている可能性を示唆している。これを確かめるために固有層からの樹状細胞の分離方法を導入した。これに時間を要した。 2)樹状細胞の亜群をどのように定めるかは、各研究グループによって様々である。これまでの分類では、関与する細胞群を上手く抽出できていないようで、別のマーカーを用いた分類方法に転換したために、一部データの取り直しが必要となった。 3)研究補助員の配置換えによるマンパワーの減少
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今後の研究の推進方策 |
残金10,882円は計画的に使用していたうえでの端数であり、来年度の研究経費の一部として使用する予定である。 1)寄生虫感染によって、樹状細胞が抗原提示分子の発現低下と共に、T細胞に対する抑制性シグナルを発現している可能性が出てきた。これを受けて、Hp感染における樹状細胞の抑制性分子の発現をフローサイトメトリー解析し、細胞を分取して産生するサイトカイン、共培養した際のT細胞の変化を検討する。さらに、その細胞群の移入によって、生理的機能を確かめる。 2)樹状細胞を欠損するマウスが利用可能となりつつある。このマウスへ上記樹状細胞を移入して、その効果を検証する。 3)HpおよびNbの虫体成分を樹状細胞と共培養し、さらにT細胞と培養することで、それぞれの虫体成分の樹状細胞への影響を検討する。虫体成分とT細胞との共培養による制御性T細胞の発現も併せて検討する。 4)急性/慢性感染に関与する細胞を同定した時点で論文にまとめる。
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次年度の研究費の使用計画 |
以下にあてる予定 1)実験動物の購入と飼育費 2)フローサイトメトリー用抗体購入 3)細胞分離、分取および培養にかかる試薬と消耗品
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