研究課題
これまでの研究により市中肺炎や動脈硬化などの炎症性疾患の原因菌の一つであるChlamydia (Chlamydophila) pneumoniae(肺炎クラミジア)の病原性分泌タンパク質と考えられるCpB0850分子が、宿主細胞の細胞分裂を阻害する可能性が明らかになっている.本研究では、CpB0850がどのような分子機構を介して宿主細胞の細胞分裂を阻害するかについて分子生物学的、細胞生物学的手法を用いて明らかにすることを目的としている. CpB0850分子による宿主細胞機能調節の解析においては欠失変異体の作製が必須となるため,本研究では新たにN末端からの欠失変異体を作製し,HEK293T細胞における安定性を確認し,同時に細胞周期のG2/Mアレストについて検討を行った.その結果,比較的発現量の確認される欠失変異体を作製することができたため,これらの欠失変異体を用い,今後のヒストンとの結合,ヒストン修飾の可能性などの解析に用いることとした.肺炎クラミジアが宿主細胞の染色体にどのような影響を与えるかを確認する目的で,感染細胞を抗RPA70抗体を用い染色したところ,肺炎クラミジア感染により宿主細胞の染色体にDNA障害が起こっていることが観察されたため,CpB0850分子のこれら宿主染色体DNAの障害への関与についても検討する また,新たな遺伝子導入,遺伝子ノックアウト系としてその樹立を目指している組み換えクラミジオファージについては,クラミジオファージを構成すると考えられている7つの遺伝子を同時に大腸菌宿主内で発現させる目的で,これら7つの遺伝子をクローニングし,同時に大腸菌を形質転換可能な4種類の発現プラスミドをすでに構築している.これら4種類の発現プラスミドを用い,組み換えクラミジオファージ系の構築を検討する.
2: おおむね順調に進展している
本年度は本研究における初年度であり,肺炎クラミジアが分泌すると考えられるCpB0850タンパク質のいくつかの変異体の作製や新たな発現系の構築に多少時間を必要とした.また,当初の研究計画を実際の研究の進捗状況と照らし合わせ,当初研究計画にはない項目についても,研究全体での必要性から積極的に行ったことにより,当初の計画とは多少のずれが生じている.しかしながら,これらの研究により,当初想定した結果のみならず副次的な研究成果も得られ始めていることから,研究全体としてはおおむね順調に進展していると考えることができる.また,当初計画していた項目については遅れが出ないよう留意し平成24年度に集中的に実施することを予定している.
平成24年度以降も引き続き研究計画に即した形で進めていく.ただし,平成23年度に計画していた研究項目については平成24年度にも実施し,さらに副次的に結果が得られ始めている研究項目についても積極的かつ発展的に研究を継続して行う.
平成24年度についても研究計画に従い,計画的に使用していく.
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すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件)
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