研究課題
これまでの研究により、市中肺炎や動脈硬化などの炎症性疾患の原因菌の一つであるChlamydia (Chlamydophila) pneumoniae(以下、肺炎クラミジア)の病原性分泌タンパク質と考えられるCpB0850分子が、宿主細胞の細胞分裂を阻害する可能性が示唆されている。本研究では、CpB0850分子がどのような分子機構を介して宿主細胞の細胞分裂を阻害するかについて分子生物学的、細胞生物学的手法を用いて明らかにすることにより、肺炎クラミジア感染によりどのように宿主細胞の細胞周期、あるいは細胞増殖が抑制されるかについて明らかにすることを目的としている。前年度に得られたCpB0850の欠失変異体を用いた検討により、CpB0850の核内への局在、細胞分裂への影響についてはN末端部分が重要であることが示唆されているため、本年度はこれらCpB0850分子の欠失変異体を4-ヒドロキシタモキシフェン(4HT)の存在下でのみ発現する発現誘導細胞の樹立をおこない、解析を進めている。また、肺炎クラミジア感染が引き起こす宿主細胞の細胞増殖の抑制については病原性分泌タンパク質の介在のみならず、他の経路でも引き起こされることが想定されていた。本研究により肺炎クラミジア感染により、AKTキナーゼのリン酸化(活性化の指標)は引き起こされるものの、その下流のp70S6Kキナーゼのリン酸化(活性化の指標)は抑制されており、この肺炎クラミジアによる細胞増殖の抑制がmTORを含む別経路の調節により行われていることが示唆された。また、この肺炎クラミジアによる宿主細胞増殖の抑制にはアポトーシスは関与していないことも併せて示唆された。この研究実績は論文発表するに至った。
2: おおむね順調に進展している
これまでに肺炎クラミジアによる宿主細胞の増殖抑制に関しては新たな知見が得られたことから全般的にはおおむね順調に進展しているといえると思われる。しかしながら、新規毒素タンパク質CpB0850を介した分子機構については、まだ全容を明らかにするに至っていないことから、当初の計画より多少のずれが生じているため、その点に留意しさらに研究に集中していくことを予定している。
平成25年度も引き続き研究計画に即した形で進めていく。平成23年度、24年度に計画していてこれまでに完全には達成していない研究項目については積極的かつ発展的に継続していく。
平成25年度の研究代表者の所属研究機関の移動に伴い、50万円を超す機器の購入が必要となっているため、次年度当初に当該機器を購入し研究を進めていく。
すべて 2013 2012
すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件)
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