研究課題
これまでの研究により、市中肺炎や動脈硬化などの炎症性疾患の原因菌の一つであるChlamydia (Chlamydophila) pneumoniae(以下、肺炎クラミジア)の病原性分泌タンパク質と考えられるCpB0850分子が、宿主細胞の細胞分裂を阻害する可能性が示唆されている。本研究では、CpB0850分子がどのような分子機構を介して宿主細胞の細胞分裂を阻害するのかについて分子生物学的、細胞生物学的手法を用いて明らかにすることにより、肺炎クラミジア感染によりどのように宿主細胞の細胞周期、あるいは細胞増殖が抑制されるかについて明らかにすることを目的とした。前年度までに得られたCpB0850の欠失変異体を用いた検討により、CpB0850の核内への局在、細胞分裂への影響についてはN末端部分が重要であることが示唆されているため、これらN末端からの欠失変異体緑色蛍光タンパク質との融合タンパク質の形で4-ヒドロキシタモキシフェン(4HT)の存在下でのみ発現する発現誘導細胞の樹立を行った。その結果、CpB0850N末端の欠失変異体を発現する細胞に比較して、野生型のGFPCpB085の発現により細胞増殖速度の低下が観察されるという予備的な結果が得られた。しかしながら、これら一連のCpB0850発現誘導細胞におけるCpB0850分子の宿主細胞内での安定性は著しく悪く、安定的にCpB0850分子の発現細胞が得ることが困難であったため、CpB0850分子による宿主細胞の細胞分裂速度低下作用を確認するには至らなかった。CpB0850分子を一過性に発現させた細胞では、細胞周期の分布が変化し、タイムラプスによる観察においても異常な細胞分裂を起こすCpB0850発現細胞が観察されている。また、ヒスチジンタグを付加したCpB0850分子を一過性に発現する細胞ライセートを用いた免疫沈降実験では、CpB0850分子によってヒストン分子が共沈されることが確認されているため、何らかの作用があることが示唆された。
すべて 2013
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