研究課題/領域番号 |
23590509
|
研究機関 | 山口大学 |
研究代表者 |
古賀 道明 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (60383014)
|
キーワード | カンピロバクター / ギラン・バレー症候群 / シアル酸 / ガングリオシド / リポオリゴ糖 |
研究概要 |
ギラン・バレー症候群は、各種感染症の後に発症する自己免疫性末梢神経疾患である。本症の標的分子として、シアル酸を含有する糖脂質(ガングリオシド)が同定されている。ギラン・バレー症候群発症の規定因子として、本症の原因細菌カンピロバクター・ジェジュニにおけるシアル化が重要であり、「シアル酸含有の多いカンピロバクター・ジェジュニ菌株がギラン・バレー症候群を惹起しやすい」との作業仮説をたて、検証することが本研究の目的である。 昨年度はカンピロバクター・ジェジュニにおけるシアル酸含量を定量できる系を確立し、その測定系を用いて本年度はカンピロバクター・ジェジュニ株のシアル酸定量を行った。 その結果、ギラン・バレー症候群患者由来株と腸炎患者由来株(=対照)との間にシアル酸の含量に有意差がないことが分かった。ギラン・バレー症候群の臨床亜型であるフィッシャー症候群患者由来株ではシアル酸含有が多い傾向がみられたものの、やはり腸炎患者由来株との間で有意差を示すことができなかった。以上の結果から、菌体上のシアル酸含有の程度だけでギラン・バレー症候群の発症が規定されているとは考えづらい。次の作業仮説として、シアル酸含有の程度だけでなく、菌体上に存在するガングリオシド(=ギラン・バレー症候群における自己免疫の標的物質)様構造の種類によっても、ギラン・バレー症候群の発症が規定されているという仮説が想定される。つまり、GM1様リポオリゴ糖やGQ1b様リポオリゴ糖を有する菌株にしぼり、シアル酸含有量を検証する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた菌株におけるシアル酸定量が計画通り実施することができ、作業仮説に対する一定の結論が得られたことから上記の通りと評価した。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の結果をもとに想定された作業仮説(シアル酸含有の程度だけでなく、菌体上に存在するガングリオシド様構造の種類によっても、ギラン・バレー症候群の発症が)に関して検証する予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
当初予定していたシアル酸定量が、当初の予定よりも効率的に実施できたことから残額が発生した。次年度では、次の作業仮説の検証のため、新たな実験系が必要となることから、プラスチック製品や試薬などの多くの消耗品を要し、その購入に多くの研究費を費やす予定である。
|