研究課題/領域番号 |
23590510
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
友安 俊文 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 准教授 (20323404)
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研究分担者 |
田端 厚之 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 助教 (10432767)
長宗 秀明 徳島大学, ソシオテクノサイエンス研究部, 教授 (40189163)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 連鎖球菌 / 細胞溶解毒素 / 発現調節機構 / 病原性 |
研究概要 |
我々は、Streptococcus intermediusの主要病原因子"インターメディリシン(ILY)"をコードするily遺伝子の発現が、他の連鎖球菌でラクトースリプレッサー(LacR)と報告されているタンパク質と高い相同性を示すタンパク質によって制御されていることを発見した。そこで、ily遺伝子の発現が本当にラクトースなどの糖によって制御されているかどうかについて調べた。その結果、ラクトースやその代謝産物であるガラクトースによってその発現が増加することを発見した。さらに、LacRの細胞内量を調べる目的で、LacRを精製し、これを用いて抗LacRウサギ抗体を作製した。この抗体を用いてlacR遺伝子破壊株や相補株のイムノブロッティングを行ったところ、破壊株ではLacRのシグナルの消失、相補株ではその回復が起こる事を確認した。我々はさらに、57株の臨床分離株のILY分泌量とlacR遺伝子の配列を決定した。その結果、深部膿瘍から分離された13株のILY高産生株のうち11株がLacRのアミノ酸配列に変異を持つことを明らかにした。さらに、これら変異の多くがLacRの活性低下の原因となることも確認した。これらの結果から、LacRが変異することによりILYが多量に産生されるようになった結果、病原性が増加し、深部臓器に膿瘍感染を引き起せるようになった株が存在する可能性が高いことが分った。加えて、個人差はあるがヒトの免疫グロブリン(IgG)がILYの産生量を低下させる事、ウシ胎児血清に含まれる約55.6kDaの分子量を持つタンパク質がily遺伝子発現を活性化することを明らかにしており、現在このタンパク質の同定を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に予定した5つの研究テーマのうち3つのテーマ(ラクトースによるily発現脱抑制の有無の検討、臨床分離株のlacR遺伝子の配列決定と系統学的解析、抗LacR抗体の作製とそれを用いたLacR発現量の確認)については、ほぼ目標とした成果を得る事が出来た。しかしながら、ilyプロモーター領域に存在しily遺伝子の発現抑制に働くinverted repeat領域とLacRの試験管内での相互作用については、はっきりとした結果は得られていない。また、ウシ胎児血清に含まれるily発現活性化因子の同定も終わっていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に終了することが出来なかった、血液成分に含まれるily発現制御因子の同定を引き続き行う予定である。また、これまでの研究ではLacRとinverted repeat領域との間で強い相互作用は認められていないが、本当に相互作用がないことを確認した場合には、lacR遺伝子が破壊されることによりその発現が影響を受けるタンパク質の同定を進め、それらの中からinverted repeat領域と相互作用してily遺伝子の発現を制御する因子の探索を進める予定である。さらに、平成24年度に計画している、血液成分が細胞内LacRの量や活性に及ぼす影響についての解析、lacR遺伝子の変異や血液成分によって発現が制御される因子のプロテオーム解析を行う予定である。また、lacR遺伝子が変異することによって細胞毒性が増加するかどうかについて、ヒト肝ガン由来の培養細胞(HepG2)を用いて解析を進めて行く予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
残額63,237円のうち、60,000円は年度末(3月26日)に行われた第85回日本細菌学会の参加費に、1,624円はその際の英文校正費にすでに支出している。残金1,613円は次年度の消耗品の購入に当てる予定である。
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