研究課題
新興感染症「アナプラズマ症」起因細菌のAnaplasma phagocytophilumは、偏性寄生性細菌であり、その細胞内感染過程は、感染初期は宿主細胞への侵入とそれに続く増殖開始までの初期、独自の寄生性小胞を形成してリソソームとの融合を阻止し、宿主細胞のアポトーシスを遅延させ、A. phagocytophilumの増殖時間を確保する中期、宿主細胞のアポトーシスを誘導して、細胞外へ脱出し新たな細胞へと感染を繰り返す後期の3段階に分けることができる。A. phagocytophilumの寄生性小胞内での増殖形態は「モルラ」と呼ばれ、感染後期では、モルラは宿主細胞質のほとんどを占めるまでに成熟する。本研究では感染中期から後期におけるA. phagocytophilumの感染維持分子機構について解析を進めることを目的とした。我々のこれまでの研究で、A. phagocytophilum感染で小胞体の構造自体が変化し、IRE-alpha、PERKおよびATF-6の3種の小胞体ストレスセンサーすべてが活性化しており、宿主細胞内でのA. phagocytophilumの増殖および感染維持に対して有効的に機能していることが判った。また、我々はテトラサイクリン系抗生物質が寄生性小胞内のA. phagocytophilumに対して静菌的ではなく、殺菌的に作用することも見出しているが、宿主細胞の小胞体ストレス状態は薬剤処理後も持続したことから、小胞体ストレスの誘導はA. phagocytophilumの感染そのもので起こるのではなく、A. phagocytophilumの分泌する何らかの病原性因子の宿主細胞へ作用による可能性が示唆された。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 3件)
Jpn. J. Infect. Dis.
巻: Advance Publication ページ: 未定
10.7883/yoken.JJID.2015.003
Emerg. Infect. Dis.
巻: 20 ページ: 508-509
10.3201/eid2003.131337