研究課題/領域番号 |
23590515
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研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
喜多 英二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90133199)
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研究分担者 |
水野 文子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70271202)
王寺 典子 (下嶋 典子) 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30398432)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 志賀毒素 / 腸管感染症 / HUS / 腸管出血性大腸菌 / 中性糖セラミド / リポ蛋白 |
研究概要 |
腸管上皮細胞表面には、Gb4 の存在は免疫染色で確認出来たが、Gb3は確認しなかった。しかし、neutral glycosphingolipids (nGSL) 組織抽出物のGC/MS解析で、monohexosylceramide (Lc2Cer), Gb3Cer, Gb4Cer が検出され、TLC及びmass spectrometry で腸管組織に微量のGb3を確認した。血漿タンパク中にもLc2Cer, Gb3Cer, Gb4Cerが検出され、TLC-immunoblottingでGSL中のlipid ceramide anchor の遊離脂肪酸のheterogeneity の存在が確認された。Gb3Cer のStx2 結合能は、腎Gb3Cer > 腸Gb3Cer > 血漿タンパクGb3Cer の順で、血漿タンパクGb3Cerの結合能は極めて低かった。このことから、血中Gb3 単独では遊離Stx2の輸送担体として機能しない可能性と、その結合能の低さにlipid ceramide anchor 中の遊離脂肪酸のheterogeneityが関与するものと推測された。腸組織Gb3CerがGb4Cerに比して少量であるにもかかわらず、Stx2結合Gb3Cerも確認された。腎尿細管上皮細胞やベロ細胞に対しては精製Stx2 は、血清非存在下でも顕著な毒性を発現したが、血管内皮細胞、脳神経細胞に対しては細胞毒性が顕著に低下した。一方、GSL-Stx2 liposome(Gb3Cer+Stx2 混合物)は血清存在下において、Stx2単独に比して1/200~1/500の毒素量で細胞死を招いた。このことから、Gb3Cer結合Stx2 の血管内皮細胞、脳神経細胞に対する毒性発現に、血清因子(リポ蛋白)を必要とするものと推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
組織、血漿中のGSL 解析、GSL-Stx2 liposome 作製と毒性比較が順調に実施でき、当初計画はおおむね順調に進んでいる。しかし、これらのデータを論文投稿 (Matsumura Y, et al. Microb. Pathog. 2012年 投稿)したが、腸組織中のGb3Cer量がGb4Cerよりはるかに少ないにもかかわらず、Stx2結合Gb3Cerが検出される理由が、結合能の差異のみで説明できるのか、また血管内皮細胞や脳神経細胞は培養株だけでなく、新鮮分離細胞で確認したか、感染マウスの腸管組織内Gb3CerへのStx2結合は確認しえるか、等のクレームがあり、当初計画はおおむね順調に進んでいるが、これらのクレームに対応するため現在実験準備に取り掛かっており、若干の遅れを生じている。
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今後の研究の推進方策 |
1)リポ蛋白(LDL)受容体(LOX-1)へのGSL-Stx2 liposomeの結合解析:LOX-1発現を抗LOX-1抗体で確認したヒト由来樹立神経細胞株(グリア細胞、アストロサイト:JCRB譲渡)を用いて、GSL-Stx2 liposomeの結合を、標識LDL存在下での競合的結合解析法で測定。2)リポ蛋白(LDL)受容体(LOX-1)へのGSL-Stx2 liposome結合後のStx2受容体の細胞内動態関連解析:蛍光標識 Stx2 を用いてGSL-Stx2 liposomeを作製し、ヒト由来樹立神経細胞株LDL受容体(LOX-1)結合GSL-Stx2 liposomeの、ラフトを介したエンドソームからゴルジ体への輸送、ゴルジ体から小胞体への輸送を、共焦点レーザー顕微鏡下で解析。3)TNF-alpha、IL-1betaなどサイトカイン刺激によるLDL 受容体発現解析:ヒト由来樹立神経細胞株でのサイトカイン刺激によるLOX-1発現を、RT-PCR、及びsurface biotin labeling 法により解析。発現亢進細胞におけるGSL-Stx2 liposomeの毒性を非刺激細胞との比較定量。4)GSL-Stx2 liposome のマウス毒性解析:静脈内投与、経口投与 及び開腹マウス大腸内への直接投与におけるGSL-Stx2 liposomeとStx2 の毒性を致死活性濃度で比較。さらに、HE染色・各種免疫染色による死亡マウス病態の多角的解析。5)LDL受容体欠損マウスにおけるSTEC感染感受性とStx2の動態解析(25年度実施に向けて、本年度遺伝子改変動物実験の申請)。6)STEC経口感染後のStx2の腸管内から脳への輸送経路解析(25年度実施計画)。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初計画に組み入れていなかった1)新鮮分離細胞で確認、2)感染マウス腸管組織内Gb3CerへのStx2結合確認等の追加実験のため、動物及び必要な試薬購入に、23年度の研究経費残額(69万円)から65万円を本年度の研究経費に組み込む。4万円は現在投稿・修正中論文の別刷り購入に使用する。本年度の研究経費(総計100万円)は、GSL-Stx2 liposomeのリポ蛋白(LDL)受容体への結合と結合物の細胞内動態解析、及びLDL受容体発現とStx2 毒性との関連解析に主眼を置いて配分する。これらの解析に関する研究費は、試薬・抗体・細胞培養関連試薬を主とする消耗品代(46万円)、又、毒性比較解析については、マウス購入を主体とする消耗品、及び試薬品代(39万円)、及び論文投稿・学会旅費などに関する費用(15万円)に配分する。
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