研究課題/領域番号 |
23590515
|
研究機関 | 奈良県立医科大学 |
研究代表者 |
喜多 英二 奈良県立医科大学, 医学部, 教授 (90133199)
|
研究分担者 |
水野 文子 奈良県立医科大学, 医学部, 講師 (70271202)
王寺 典子(下嶋典子) 奈良県立医科大学, 医学部, 助教 (30398432)
|
キーワード | 志賀毒素 / 腸管感染症 / HUS / 腸管出血性大腸菌 / 中性糖セラミド / リポ蛋白 |
研究概要 |
本年度は、まず1)リポ蛋白(LDL)へのGSL-Stx2 liposomeの結合能を解析した。liposomeは、TLC immunoblotting において、LDL, VLDL への高い結合能をしめしたが、HDLへの結合は検出レベル以下であった。さらに、LDL, VLDL 両分画に結合したliposome は、Stx2 を保持していることも確認された。TLC immunoblotting において、結合バンドが複数みられたことから、TLCで展開した標品から該当するバンドを抽出し、各抽出標品中のGb3Cer moiety をGC/MS解析した。その結果、C24:0/C24:1が主要な脂肪酸であること、さらにlipid ceramide anchor 中の遊離脂肪酸のheterogeneityはLc2Cer, GalCer, GlcCerが関与しており、中でもGalCerが主体であることが認められた。 次に、2)LDL結合GSL-Stx2 liposomeの血管内皮細胞内での動態を共焦点レーザー顕微鏡で解析した。Sx2 単独投与に比して、Gb3発現量の少ない血管内皮細胞に対して、効率的に細胞内に取り込まれ、顕著なラフト構造の変化を誘導し、ゴルジ装置内を逆行性に輸送されることが確認された。TNF-alphaやIL-1beta刺激血管内皮細胞では、この効果は一層顕著であり、現在定量化を試みている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
論文投稿 (Matsumura Y, et al. Microb. Pathog. 2012年 投稿)したが、腸組織中のGb3Cer量がGb4Cerよりはるかに少ないにもかかわらず、① Stx2結合Gb3Cerが検出される理由が、結合能の差異のみで説明できるのか、また② 血管内皮細胞や脳神経細胞は培養株だけでなく、新鮮分離細胞で確認したか等のクレームがあり、当初計画はおおむね順調に進んでいたが、これらのクレームに対応するため研究に遅れがでた。① については問題なく解答し得たが、②については、培養株と新鮮分離株での差異を定量化で明確にすること、更にサイトカイン刺激によるGSL-Stx2 liposome の取り込み及び細胞内でのretrograde transport の差異について「定量化」での違いを明確にすることを求められ、現在実施中である。このため、当初予定の動物実験等において、遅れが生じている。
|
今後の研究の推進方策 |
1) TNF-alpha、IL-1betaなどサイトカイン刺激によるLDL 受容体発現解析: 血管内皮細胞、脳神経細胞におけるLDL 受容体発現に、どの様なサイトカインが関与しているかを、培養系での免疫染色、フローサイトメトリーで解析し、GSL-Stx2 liposome投与マウス組織での発現は免疫染色で確認する。 2) STEC経口感染後のStx2の腸管内から脳への輸送経路解析:放射標識GSL-Stx2 liposome投与後のマウスをもちいて、オートラジオグラフィーでトレースする。 3) LDL受容体欠損マウスにおけるSTEC感染感受性とStx2の動態解析:LDL受容体欠損マウスへのSTEC感染、及びGSL-Stx2 liposome投与後の感受性(生死)比較と、放射標識GSL-Stx2 liposome投与後のStx2 動態をオートラジオグラフィーでトレース比較する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究経費(総計108万円)は、GSL-Stx2 liposomeのリポ蛋白(LDL)受容体への結合と結合物の細胞内動態解析の試薬・消耗品購入(41万円)、及びSTEC経口感染後のStx2の腸管内から脳への輸送経路解析の試薬・消耗品購入(32万円)及び動物関連(10万円)、及びLDL受容体欠損マウスにおけるSTEC感染感受性とStx2の動態解析の試薬・消耗品購入(10万円)に主眼を置いて配分し、論文投稿・学会旅費などに関する費用(15万円)にも配分する。
|