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2011 年度 実施状況報告書

細胞表層応答による百日咳菌の病原性発現調節機構

研究課題

研究課題/領域番号 23590517
研究機関杏林大学

研究代表者

花輪 智子  杏林大学, 医学部, 講師 (80255405)

研究分担者 神谷 茂  杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワード百日咳菌 / 病原因子 / アデニレートシクラーゼヘモリジン / 細胞表層応答 / σE / 発現
研究概要

百日咳菌の必須病原因子であるアデニレートシクラーゼ(CyaA)はI型分泌装置で分泌される。その後約90%は表層に局在することが知られているが、存在様式等については明らかにされていない。細胞表層ストレス応答に関与するRNA polymeraseのシグマ因子;σEはRseAによって負に制御されているおり、申請者らはこれまでにrseA遺伝子欠損株を用いて表層ストレス応答の亢進により培地中CyaA量が増加することを明らかにした。本課題ではその機構について解析する。 平成23年度はcyaAオペロンの転写について解析およびCyaAの局在について検討を行なった。CyaAおよび分泌装置の遺伝子を含むオペロンのプロモーター活性をlacZによるレポーターアッセイで測定したところ、両プロモーターともに変異株および野生株で同等の活性を示した。さらにqRT-PCRによりmRNA量を比較したところ、顕著な違いは認められなかったことから表層ストレスはcyaAおよび分泌装置遺伝子群の転写発現に影響を与えないことが明らかとなった。 培養上清中CyaAの存在様式を検討する目的で限外ろ過膜を用いて分画し、抗CyaA抗体を用いたmmuno blottingを行なった。その結果、分子量約200kDaのCyaAは100kDa以上の画分のみに検出され、これまでと同様にrseA変異株で顕著に増加していた。一方、野生株の50kDa以上100kDa以下の画分におよそ40kDaのバンドが検出され、CyaAの分解物である可能性が考えられた。これはPM18にはみられなかったことからσE活性化による培地中CyaA量の増加は培地中CyaAの安定化によるものであることが示唆された。 本研究で明らかされた細胞外ストレス応答によるCyaAの遊離および安定化等に関する知見は病原性発現解明と共にワクチン製造に重要な情報となるものと考えている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

本研究の目的は細胞表層ストレス応答による遊離CyaAの増加機構を解明するものである。当該年度は計画書に記載した内容に従って(1)cyaA遺伝子および分泌装置遺伝子群の転写への影響の検討(2)CyaAの存在様式の解析(3)線維状赤血球凝集素(FHA)の抗体作成を行った。(1)転写の解析ではレポーターアッセイ系を構築し、cyaAおよび分泌装置遺伝子プロモーターの活性測定を行なった。また、qRT-PCRによりmRNA量の定量を行った。(2)存在様式の解析を目的として限外ろ過膜を利用した分子篩により培養ろ液の分画、濃縮を行なった。各画分のCyaAをimmuno blottingで検出した。これらの結果より細胞表層ストレス応答により遊離CyaAの増加原因は転写発現の誘発ではなくCyaAの安定性によるものであると考えられた。(3)線維状赤血球凝集素(FHA)の抗体作成については553番目から1084番目のアミノ酸をコードする遺伝子領域をpQE32に組み込み、His-TagをN末端にもつFHA553-1084として大腸菌に発現させた。精製したHis-FHA553-1084を抗原としてウサギを用いてpolyclonal抗体を作成した。 以上より、研究を施行するにあたり、申請書に記載した実験をほぼ全て遂行し、十分な結果を得たと考えている。

今後の研究の推進方策

平成24年度以降の研究計画は基本的に当初の研究計画に沿って進めるが、それらに加えて前年の結果より明らかにしたCyaAの安定化についてさらに詳細な解析を行なう。 FHAは百日咳菌の肺胞上皮細胞へ付着に関与する因子であり、FHAの遺伝子欠損変異により表層に局在していたほぼ全てのCyaAが遊離することからCyaAの表層局在にFHAは重要な役割を担っていることが報告されている(Zaretzky FR, 2002)。また、細胞質で合成されたた240kDaのFHA前駆体はSec依存にsignal peptideを切断しながらペリプラスムに移行しそこでSphB1プロテアーゼによりC末端130kDaが切断されmatureな232kDaのFHAとなる。その後two-partner secretion systemにより外膜を通過した後、一部のFHAは遊離するがその殆どは細胞表層に局在する。FHAの遊離機構およびその存在意義等については明らかにされていない。 平成24年度にはFHAの産生量および局在をImmuno blottingで解析する。野生株とrseA変異株でその存在量に違いがみられた場合にはqRT-PCRによりmRNA量の測定を行い、転写発現の関与について検討する。これらの実験によりσEの活性化によるCyaAの遊離にFHAが関与しているかについて検討を行なう。 遊離CyaAの存在様式に関する解析については密度勾配遠心法によりCyaAが含まれる画分を分画してさらに詳細を検討する。また、FHAと共存するかについて検討する。これにより表層に局在するCyaAおよびFHAの遊離がσEの活性化により亢進するかを明らかにする。

次年度の研究費の使用計画

上記の24年度の研究計画から研究費は主にqRT-PCRおよびimmunoblottingに係る試薬および、アデニレートシクラーゼ活性測定のためのELISA kit等の試薬および消耗品等に用いる他、発表準備のための英文校正等に使用する予定である。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2011

すべて 学会発表 (3件)

  • [学会発表] Envelope stress response and secretion in Bordetella pertussis.2011

    • 著者名/発表者名
      T. Hanawa, H. Yonezawa, T. Osaki, S. Kurata, C. Zaman, S. K. Armstrong, and S. Kamiya
    • 学会等名
      XIII International Congress of Bacteriology and Applied Microbiology
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      September 6-10, 2011
  • [学会発表] Implication of the role of stringent response in the expression of adenylate cyclase toxin in Bordetella pertussis.2011

    • 著者名/発表者名
      T. Hanawa, K. Sugisaki, H. Yonezawa, T. Osaki, S. Kurata, C. Zaman, S. Kamiya
    • 学会等名
      The Joint Meeting of the 17th International Symposium on Gnotobiology (ISG) and the 34th Congress of Society for Microbial Ecology and Disease
    • 発表場所
      横浜
    • 年月日
      November 20-23, 2011
  • [学会発表] Envelope stress response and secretion in Bordetella pertussisRole of σE in the envelope stress response and an implication for the production of toxins in Bordetella pertussis.2011

    • 著者名/発表者名
      T. Hanawa, H. Yonezawa, S. Kamiya, S. K. Armstrong
    • 学会等名
      111th general meeting of the American Society for Microbiology
    • 発表場所
      New Orleans, LA, USA
    • 年月日
      May 21- 24, 2011

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公開日: 2013-07-10  

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