研究課題/領域番号 |
23590518
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
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研究分担者 |
高橋 信一 杏林大学, 医学部, 教授 (10137953)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / 胃粘膜 / フローラ / 胃炎 / 胃癌 |
研究概要 |
萎縮性胃炎患者8名、胃癌患者1名に対して胃粘膜フローラおよびH. pyloriに関する基礎的解析を行った。培養法により胃粘膜フローラ構成細菌を分離するとともに、胃生検材料から全DNAを抽出し胃内フローラの構成を解析した。さらに、H. pyloriの存在については、培養およびPCRにより判定した。胃炎患者8名のうち、H. pylori陽性者は4名、陰性者は4名で、培養の結果とPCRによる結果が一致していた。胃内フローラの定量解析からは、Streptococcus属およびLactobacillus属が高頻度に検出されたが、H. pylori陽性と陰性の患者による差は認められなかった。Atopobacterium属菌、Enterococcus属菌、Veillonella属菌がH. pylori陽性の患者にのみ検出された。胃癌患者1名の胃粘膜はH. pylori陽性であり、Streptococcus属細菌がPCR法により検出された。分離培養菌株については、16SrDNA遺伝子配列により同定した。その結果、分離培養菌はStreptococcus属が最優勢となり、培養陰性の一例を除くすべての患者から検出された。分離菌はS. salivalius S. parasanguis, S. mitis, S. oralisが多く、これらは口腔由来のStreptococcus属細菌であると考えられた。その他、Neisseria属菌、Actinomyces属菌、Rothia 属菌などが検出された。少数例ではVeillonella parvullaが検出された。 本結果はH. pylori感染が胃酸分泌の低下を介して、胃内環境を他の細菌の生存に適したものへと変化させる可能性を示唆する。分離培養された胃内細菌とH. pyloriとの相互作用については今後の検討課題となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究計画では胃炎患者20名(H. pylori陽性10名、陰性10名)および胃癌患者20名(H. pylori陽性10名、陰性10名)より内視鏡的に胃生検材料を採取することになっていた。平成23年度では胃炎患者8名(H. pylori陽性4名、陰性4名)および胃癌患者1名(H. pylori陽性)より内視鏡的に胃生検材料を採取することが可能であった。予定症例数には達することができなかったが、PCR法による胃内細菌叢解析法および胃内細菌の分離法についての実験条件・手技を確立することができた。平成24年度には予定検体数を確保するように研究分担者との連携を図る。
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今後の研究の推進方策 |
予定された胃生検材料(胃炎患者12名、胃癌患者19名)を採取し、胃粘膜フローラの解析および分離培養細菌の性状解析を行う。胃炎および胃癌由来の胃内フローラとの間に相違がないかどうかを比較検討する。分離培養胃内細菌のH. pyloriに対する効果(抗菌作用、病原因子産生阻害作用など)もについてin vitroにて解析を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
胃内フローラの解析および分離された胃内細菌の性状解析に必要な試薬、器具を購入するために使用する。加えて、本年5月にスペイン国バレンシア市で開催される第35回国際微生物生態学会での研究成果発表および同国バルセロナ市のPen & Tech Consulting社DirectorであるElinor McCartney博士とのプロバイオティクス開発に関する打ち合わせのための旅費に使用する。
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