研究課題/領域番号 |
23590518
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研究機関 | 杏林大学 |
研究代表者 |
神谷 茂 杏林大学, 医学部, 教授 (10177587)
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研究分担者 |
高橋 信一 杏林大学, 医学部, 教授 (10137953)
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キーワード | ヘリコバクター・ピロリ / 胃粘膜 / フローラ / T-RFLP / 胃炎 / 胃癌 |
研究概要 |
Helicobacter pylori感染の有無と発癌による胃内細菌叢の変化を解析する目的で、H. pylori陽性胃炎患者由来4検体とH. pylori陰性胃炎患者由来4検体さらに胃癌患者由来1検体のT-RFLP(Terminal Restriction Fragment Length Polymorphism; 末端標識制限酵素断片多型分析)法による菌叢解析を実施した。 検体から総DNAを抽出後、16SrRNA遺伝子をターゲットとするユニバーサルプライマー(27Fおよび1492R)でPCR増幅を行い、制限酵素HaeIII、HhaI、MspIを用いて処理し、解析を実施した。MspI処理したT-RFLP解析の結果、H. pyloriと考えられたフラグメントが全試料中に占める割合はH. pylori培養陽性の検体では72.4から97.8%と高かく、分離されたピークの数は2-8本で、H. pylori陽性者の胃内には他の細菌の存在は極めて低い割合であることが示唆された。これに対して、増幅産物を得た2検体についてT-RFLP解析を実施した結果では、ピークの数は11本と17本であり、胃内には多菌種が存在していることが示唆された。しかし、H. pylori陰性者の胃内菌数の解析の結果、2検体は16SrRNA遺伝子をターゲットとしたPCRによる増幅産物を十分得ることができず、胃内に存在する細菌数が極めて少ないことが示唆された。 また、サンプルのT-RFLPの結果からウォード法によるクラスター解析を実施した。H. pylori陽性の胃炎3例と胃癌1例、H. pylori陰性2例、陽性胃炎1例が別のクラスターとして認識された。胃癌患者の胃内菌叢がH. pylori陽性者と比べて陰性者の胃内菌叢に近いパターンを示す原因は不明であり、今後症例数を増やすとともに詳細な解析が必要と考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成23年度に菌種特異的な16S rRNA遺伝子をターゲットとするプライマーを使用してリアルタイムPCR法にて胃内細菌叢の定量的解析を行なった。生検提出時には分離培養を実施して、分離された菌株は-80℃にて保管している。平成24年度にはT-RFLP法を用いて胃炎および胃癌患者における胃内細菌叢の解析を行った。これにより、異なった手法により胃内細菌叢構成細菌とH. pylori感染との生態学的基礎知見が得られたことは、最終年度の研究に大きなインパクトを与えている。
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今後の研究の推進方策 |
研究分担者の高橋により多数の胃炎患者および胃癌患者の胃生検材料を採取するように努める。外来胃内視鏡検査では胃炎患者が胃癌患者に比べて圧倒的に多いため、胃癌患者からの胃生検材料の採取が比較的困難となるが、目標とする20例の試料を採取できるよう努力する。全ての生検材料について菌種特異的な16S rRNA遺伝子をターゲットとするプライマーを用いたリアルタイムPCR法による定量的解析およびT-RFLP法を用いて胃内細菌叢を調べる。加えて、胃粘膜より分離培養された菌株を用いて抗H. pylori活性のスクリーニングを行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
胃内フローラのT-RFLP解析および分離された胃内細菌の性状解析に必要な試薬等の購入に使用される。また、平成25年9月に英国Dundeeにて開催されるCHRO(Campylobacter and Helicobacter Related Organisms) 2013学会に参加するための旅費、宿泊費に使用する。
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