研究課題/領域番号 |
23590519
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研究機関 | 順天堂大学 |
研究代表者 |
長岡 功 順天堂大学, 医学部, 教授 (60164399)
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研究分担者 |
桑原 京子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (10167976)
射場 敏明 順天堂大学, 医学部, 教授 (40193635)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 敗血症 / alarmin / ピロトーシス / 抗菌ペプチド / マクロファージ / 細胞死 / エンドトキシン / カスパーゼ |
研究概要 |
【目的】敗血症は救急救命治療の発達した先進国においても未だ致死的経過をたどる重篤な病態であり、その多くにグラム陰性菌、陽性菌感染が関与している。近年、見出された細胞死ピロトーシスは、caspase-1の活性化によってIL-1βやIL-18などのサイトカインを放出し、炎症反応を惹起・増強させることから、敗血症の病態における役割が注目されている。そして、グラム陰性菌のリポ多糖(LPS)が宿主細胞の膜表面LPS受容体(CD14/TLR4)に結合してcaspase-1やIL-1βの発現を誘導することや、死細胞から放出されたATPとともにピロトーシスを惹起することが報告されている。一方、我々は、危険信号分子alarminの一つである抗菌ペプチドLL-37がLPSに結合して、その作用を抑制(中和)することを明らかにしている。そこで、本研究では、alarminによるピロトーシス制御の観点から敗血症の病態を解明するために、LPS/ATPによって誘発されるピロトーシスに及ぼすLL-37の効果について検討した。【方法】マウスのマクロファージ様細胞株J774をLL-37存在下あるいは非存在下でLPS刺激した後に、ATPを添加してピロトーシスを誘導した。そして、その上清を用いて乳酸脱水素酵素LDH活性(細胞死)とIL-1βの放出を測定した。さらに、caspase-1活性を測定した。【結果】J774細胞をLPSで刺激した後にATPを添加すると、caspase-1の活性化とピロトーシス(IL-1βの放出をともなう細胞死)が誘導された。興味深いことに、LL-37はLPS/ATP処理したJ774細胞のcaspase-1の活性化とIL-1β放出に加えて細胞死を抑制した。これらの結果から、LL-37はLPSの作用を中和することによって、LPS/ATP処理によって誘導されるピロトーシスを抑制することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度、培養細胞を用いて、ピロトーシスに及ぼすLL-37の効果についてin vitroで検討することができたが、敗血症性モデル等を用いた検討を遂行することができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
ピロトーシスに及ぼすLL-37の効果について、分子レベルでさらに解析するとともに、敗血症性モデル等を用いて検討する。
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次年度の研究費の使用計画 |
「次年度使用額」が生じた原因として、敗血症性モデル等を用いた検討を遂行することができなかったことが考えられる。そのため、以下の項目を計画することによって、翌年度以降に請求する研究費と併せて使用する。【敗血症モデルを用いた評価】 ICR系マウスの盲腸を結紮し、これを注射針で穿孔すると腸管から腹腔に菌が漏出し敗血症を誘発する(cecal ligation and puncture: CLP)。このモデルにおいて、末梢血白血球と各種組織(脾臓、リンパ節、上皮組織など)のピロトーシスを評価する。さらに、敗血症モデルマウスにおける、末梢血白血球ならびに各種組織におけるピロトーシスと、alarmin分子の動態との関係を明らかにする。
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