研究課題/領域番号 |
23590521
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研究機関 | 東京慈恵会医科大学 |
研究代表者 |
水之江 義充 東京慈恵会医科大学, 医学部, 教授 (20157514)
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研究分担者 |
田嶌 亜紀子 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (70317973)
岩瀬 忠行 東京慈恵会医科大学, 医学部, 講師 (80385294)
杉本 真也 東京慈恵会医科大学, 医学部, 助教 (60464393)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ATP / 腸球菌 / トランスポゾン |
研究概要 |
ATP分泌腸球菌のATPの分泌に関わる遺伝子の同定を行うために、腸球菌の遺伝子操作系(トランスポゾンやプラスミドの導入)の確立を試みた。腸球菌は、腸内常在細菌であり、この菌を用いたトランスポゾン導入による変異体の作製などの遺伝学的解析は、全くなされていない。そこで、他のグラム陽性菌(腸球菌、乳酸菌、ブドウ球菌など)で使用されているトランスポゾンやプラスミドを収集し、腸球菌に導入できるか検討し、トランスポゾンTn916の腸球菌導入に成功した。導入可能なトランスポゾンが得られたので、ATP分泌菌にトランスポゾンを導入し、3800株のトランスポゾン挿入株を得た。トランスポゾン導入株のATP分泌能を検索した結果、1株のATPを分泌しない株を分離した。この株についてゲノム解析を行ったところ、4箇所にトランスポゾンが挿入されている事が分かった。そのうち、1つのORFの中にトランスポゾンが挿入されていた。このORFについてホモロジー検索を行なったところ、未知遺伝子であった。今後、この遺伝子を破壊した株を作成することで、本遺伝子がATP分泌に関与するかどうかを明らかにできるものと考えられる。また、生化学的な解析により、遺伝子の機能を推定できるものと期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸球菌は腸内常在細菌であり、この菌を用いた変異体の作製など遺伝的解析は全くなされていなかった。我々は、腸球菌に導入可能なトランスポゾンを見いだし、導入効率を上げるための工夫を行い、数千株のトランスポゾン挿入株を得ることができた。また、トランスポゾン挿入株をスクリーニングした結果1株のATP非分泌株を得た。この変異体の解析を進めることによりATPの分泌機構の解明が可能になると思われる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度に得られた結果を基にして、ATP 分泌機構の解明およびATP の分泌に影響を与える因子の解析を行う。i)上記の実験で同定されたATP 分泌に関わる遺伝子のホモロジー検索を行い、ATP トランスポーターなどATP の分泌装置と考えられるものを選択し、大量発現により精製したATP 分泌タンパク質の人工脂質二重膜への再構成およびATP 分泌の評価を行う。ii)ATP 分泌に関わる遺伝子のなかで、発現制御遺伝子にホモロジーのある遺伝子を選別し、ATP の分泌装置を構成する遺伝子の発現に与える影響を解析する。iii) 現在のところ、細胞培養に用いる培地(RPMI やDMEM)では、ATP の分泌が認められるが、通常の細菌培地(TSB, LB, BHI など)では、ATP の分泌は認められない。そこで、RPMI やDMEM に含まれるが、通常培地に含まれない因子を検索し、どの因子が、ATP の分泌に影響を与えているかを検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
計上していた極微量分光光度計が、予算よりも安く購入でき、また、計上していた人件費・謝金は発生せず、その他で計上していた予算額も少額の支出で済んだため、平成23年度予算において一部が未使用となったので、次年度のATP分泌機構の解明に使用する予定である。次年度の研究費は、ATP分泌に関わる遺伝子の解析や分泌に与える因子の解析の試薬購入費、および国内の研究発表のため旅費として使用する予定である。
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