研究実績の概要 |
E.coli反復投与による自己免疫性膵炎(autoimmune pancreatitis:AIP)モデルをマウスで作製した。AIP様の膵病変、唾液腺・涙腺・腎臓などに高頻度に炎症が生じた。現在血中IgG1(ヒトIgG4相当)値、炎症部位のIgG1陽性細胞の浸潤を調べ、IgG4関連疾患(IgG4-RD)のモデルになり得るか検討している。病原因子として同定したFliCについては、抗FliC抗体がヒトAIP患者で有意に上昇していること、マウスへの投与によりAIP様の病変を誘導することを明らかにした。現在、FliC上のAIP誘導ドメインを検索中である。E.coliのFliCはAIPを誘導するがSalmoneraのFliCは誘導しなかったことから、hyper variable domainが重要と考える。さらにAIPモデルのマウス膵臓を二次元電気泳動し、AIP様の膵炎を生じたマウス血清と反応させ、得られたスポットについてMALDI-TOF/MSを行い自己標的抗原を検索中である。AIPモデルマウス脾臓をRAG2-/-マウスに移入するとdonorマウスにAIP様細胞浸潤が認められ、制御性T細胞(Treg)が多く検出された。Tregの誘導やIL-10,TGF-βの血中濃度の推移などとAIPの重症度との関係を調べ、TregのAIPないしIgG4関連疾患への関与について検討中である。AIP患者血中抗FliC抗体値が慢性膵炎患者の値より有意に高かったことから、AIPの重症度と抗FliC抗体値の関連を調べるためにAIP患者の病態の推移に対応して血液を集めつつある。
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