研究課題/領域番号 |
23590523
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
後藤 直正 京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30121560)
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研究分担者 |
奥田 潤 香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90334276)
皆川 周 京都薬科大学, 薬学部, 助教 (50445962)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | トランスロケーション / 緑膿菌 / 比較ゲノム解析 / ExoS / MucD / ムチン層 / シデロフォア / 細胞層透過 |
研究概要 |
グラム陰性菌、とくに緑膿菌のゲノム情報(比較ゲノム解析およびTn挿入変異株ライブラリー解析)を基盤に本菌のトランスロケーションのメカニズムの統合的な全貌を明らかにすることにより血液感染症の防止策や治療のための新規抗感染症薬創製のためのターゲットバリデーションを行うことを目的に本年度は(1)比較ゲノム研究から同定した候補遺伝子の網羅的ノックアウト株の作成; (2)候補遺伝子のin vitro表現型解析; (3)培養細胞モノレイヤによる透過実験の実施を計画し、次の成果を得た。1、比較ゲノム研究から同定した機能既知および未知の61の候補遺伝子群の相同的組換え法によるノックアウト株の作成を終了した。現在、相補プラスミドの作成が進行中である。2、遺伝子欠損および相補株を作成し、その性状を調べること、また病理学的解析により、緑膿菌は、炎症性サイトカインであるIL-8の産生を誘導し、自身が産生するMucDプロテアーゼによって分解することを明らかにした。3、ヒト結腸癌由来Caco-2細胞を用いたin vitro実験および無脊椎動物であるカイコを用いたin vivo実験により、鉄獲得に働くシデロフォア合成の遺伝子群は、3型エフェクターExoSの産生を制御し、それによって緑膿菌の宿主細胞層透過が変化することを明らかにした。さらに、シデロフォア遺伝子は、細胞層透過に機能するのみならず、宿主血液中での病原性発揮に重要な役割をもつことも明らかになった。4、緑膿菌の宿主細胞への接近には、鞭毛運動のみならず、宿主細胞表面を覆うムチンをプロテアーゼによって分解することを明らかにした。 緑膿菌の宿主上皮細胞透過の過程は少なくとも5つのステップに分けることができる。本年度の研究で「接近」、「透過開始」の機構を明らかにすることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
概要に記したように、本年度のほとんどの研究計画項目を達成することができた。これらの成果は次の計画の実施に大きく貢献するものと評価できる。また、この推進によって、本補助金研究の実施期間内に、少なくとも、緑膿菌の宿主上皮組織透過におけるメカニズムの解明まで至るものと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成23年度の研究をさらに継続するとともに、次の研究項目に着手することにより、目的に達成を目指す。1) カイコ感染実験による候補遺伝子の評価 本研究組織で確立した経口感染法を応用し、構築した変異株の腸管経由トランスロケーションをカイコ腸管を傷つけることなく、経口接種によって評価する。2) 白血球減少マウス内因感染モデル実験 白血球減少マウス内因感染モデル実験により、構築した変異株の経口接種による腸管経由血液感染およびそれに伴う致死効果および腸管組織の病変を観察することにより、候補遺伝子のin vivoでの評価を行う。また、経鼻感染による肺組織病変も同時に観察することにより、腸管経由に特異的に働く遺伝子群の探索も行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究を遂行していくにあたり、実験に掛かる経費が中心となるため、物品費(試薬代、消耗品代)が必要経費の中心として計画している。また、研究成果を発表するとともに、関連する研究についての情報収集を行うため、国内外の学会へ参加するための旅費を使用計画に含んでいます。さらに、成果を論文としてまとめ投稿するために、論文校正などの経費の使用を計画している。
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