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2012 年度 実施状況報告書

緑膿菌の腸管経由トランスロケーションの統合的解析

研究課題

研究課題/領域番号 23590523
研究機関京都薬科大学

研究代表者

後藤 直正  京都薬科大学, 薬学部, 教授 (30121560)

研究分担者 奥田 潤  香川県立保健医療大学, 保健医療学部, 教授 (90334276)
皆川 周  京都薬科大学, 薬学部, 助教 (50445962)
キーワード緑膿菌 / トランスロケーション / 比較ゲノム解析 / 鞭毛 / セリンプロテアーゼ / III型分泌機構 / 上皮細胞層 / ムチン層
研究概要

緑膿菌のゲノム情報(比較ゲノム解析およびTn挿入変異株ライブラリー解析)を基盤とした統合的な解析によって本菌のトランスロケーション機構を解明することで、本菌の新規抗感染症予防および治療法考案のためのターゲットバリデーションを行うことを目的とし、本年度は、1.緑膿菌のムチン層透過機構の解析;2.比較ゲノム研究から同定した遺伝子の解析を計画し、次の成果を得た。
【1.ムチン層透過】昨年度は、緑膿菌のムチン層透過には鞭毛運動に加えて宿主細胞表面を覆うムチンを分解する機構が寄与することを報告した。本年度は、緑膿菌のムチン分解セリンプロテアーゼの同定およびムチン層透過への寄与を解析した。in silico解析によって同定した緑膿菌PAO1株の12個のセリンプロテアーゼ遺伝子欠損株を作製したところ、mucD遺伝子の欠損はCaco-2細胞ムチン量の減少を引き起こさなかった。また、mucD遺伝子の欠損は、fliC遺伝子の欠損と相乗的に本菌のムチン層透過能を低下させた。以上の結果から、緑膿菌は鞭毛運動とmucD 遺伝子を介したムチン分解との2つの機能を協力的に作用させることでムチン層を透過することが明らかになった。
【2.比較ゲノム研究】昨年度は、比較ゲノム研究から同定した機能既知および未知の60の候補遺伝子群の相同的組換え法によるノックアウト株を作製したことを報告した。本年度は、相補プラスミドの作成を行なった。現在、培養上皮細胞およびカイコ経口感染実験によって同定した遺伝子の緑膿菌トランスロケーションへの寄与を調べている。
本研究のこれまでの成果から、腸管上皮組織で重要な障壁として働くムチン層や強固な上皮細胞間接着を越える緑膿菌の2つの機能が明らかとなり、緑膿菌トランスロケーションの全体像を解明するための端緒を開くことができた。今後、これら成果が次の計画の実施に大きく貢献するものと評価できる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

概要に記したように、本年度の研究計画項目についておおむね達成することができている。特に本研究成果は、既に論文で受理・掲載されていることや国内外の学会発表での質問の多さからも関心の高い内容であることが認識されているとともに、今後の発展性が高いと考えており、次の計画の実施に大きく貢献するものと評価できる。また、これら推進によって、本補助金研究の実施期間内に、少なくとも緑膿菌のトランスロケーションメカニズムに寄与する遺伝子の同定まで至るものと考えられる。

今後の研究の推進方策

平成24年度の研究を継続するとともに、同定した遺伝子の緑膿菌トランスロケーションへの寄与について培養上皮細胞を用いたin vitro評価に加えて、カイコおよび白血球減少マウス内因感染モデルを用いてin vivo 評価することで目的の達成を目指す。
【1.培養上皮細胞透過実験】作製した緑膿菌遺伝子変異株の培養上皮細胞に対する付着、侵入、透過能を評価することで、候補遺伝子の腸管上皮細胞モノレイヤ透過への寄与を調べる。また、従来の解析手法に加えて蛍光顕微鏡による緑膿菌感染時の動画撮影(ライブセルイメージング)を行なうことで、緑膿菌の上皮細胞への感染動態をリアルタイムに解析する。
【2.カイコ経口感染実験】本研究組織で確立した経口感染法によって作製した緑膿菌遺伝子変異株をカイコに経口感染後、カイコの致死率および体液(へモリンフ)中の菌数を調べることで、候補遺伝子の腸管経由トランスロケーションへの寄与を調べる。
【3.白血球減少マウス内因感染モデル実験】作製した緑膿菌遺伝子変異株を経口感染後、マウスの腸管組織の病変、致死率、および血液や各臓器中の菌数を調べることで、候補遺伝子の腸管経由トランスロケーションへの寄与を調べる。

次年度の研究費の使用計画

次年度の研究を遂行していくにあたり、特別に必要な設備などは計画しておらず、実験に掛かる経費が中心となるため物品代(試薬代、消耗品代)を中心とした代が必要経費の中心として計画している。また、研究成果を発表するとともに、関連する研究についての情報収集を行うため、国内外の学会へ参加するための旅費を使用計画に含んでいる。さらに、成果を論文としてまとめ投稿するために、論文校正などの経費の使用を計画している。

  • 研究成果

    (16件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (14件)

  • [雑誌論文] Interplay of flagellar motility and mucin degradation by MucD stimulates the association of Pseudomonas aeruginosa with human epithelial colorectal adenocarcinoma (Caco-2) cells.2013

    • 著者名/発表者名
      Hayashi, N., Matsukawa, M., Horinishi, Y., Nakai, K., Shoji, A., Yoneko, Y., Yoshida, S., Minagawa, S., Gotoh, N.
    • 雑誌名

      J. Infect. Chemother.

      巻: 19 ページ: 305-315

    • DOI

      10.1007/s10156-013-0554-4.

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Complementation of the exoS gene in the pvdE pyoverdine synthesis gene-deficient mutant of Pseudomonas aeruginosa results in recovery of the pvdE gene-mediated penetration through the intestinal epithelial cell barrier but not the pvdE-mediated virulence in silkworms.2012

    • 著者名/発表者名
      Okuda, J., Okamoto, M., Hayashi, N., Sawada, S., Minagawa, S., Gotoh, N.
    • 雑誌名

      J. Infect. Chemother.

      巻: 18 ページ: 332-340

    • DOI

      10.1007/s10156-011-0257-7

    • 査読あり
  • [学会発表] 緑膿菌によるムチン層透過機構の解析2013

    • 著者名/発表者名
      林直樹、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第86回日本細菌学会総会
    • 発表場所
      千葉
    • 年月日
      2013-03-18
  • [学会発表] 緑膿菌の鞭毛運動とムチン分解によるムチン層透過機構の解析2013

    • 著者名/発表者名
      林直樹、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第47回緑膿菌感染症研究会
    • 発表場所
      札幌
    • 年月日
      2013-02-22
  • [学会発表] 緑膿菌によるムチン層透過機構の解析2012

    • 著者名/発表者名
      林直樹、堀西祐多、松川真理子、庄司愛、中井勝也、吉田奈緒美、米子佳希、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第24回微生物シンポジウム
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      2012-09-04
  • [学会発表] タイプ III エフェクター ExoS を介した緑膿菌の組織上皮細胞層透過活性と鉄獲得系遺伝子 pvdEを介した病原性との相関

    • 著者名/発表者名
      奥田潤、林直樹、後藤直正
    • 学会等名
      第86回日本感染症学会総会
    • 発表場所
      長崎
  • [学会発表] Penetration of Pseudomonas aeruginosa through the intestinal epithelial cell mucin barrier.

    • 著者名/発表者名
      Naoki Hayashi, Jun Okuda, Shu Minagawa, Naomasa Gotoh.
    • 学会等名
      American society for microbiology 112th general meeting
    • 発表場所
      San Francisco
  • [学会発表] Pseudomonas aeruginosa による上皮細胞層透過機構の解析

    • 著者名/発表者名
      林直樹、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第6回細菌学・若手コロッセウム
    • 発表場所
      東京
  • [学会発表] 緑膿菌による上皮細胞層透過機構の解析

    • 著者名/発表者名
      林直樹、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第11回次世代を担うファーマ・バイオフォーラム2012
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] 緑膿菌のMucDセリンプロテアーゼによるムチン分解機構の解析

    • 著者名/発表者名
      高石彩香、中井勝也、吉田奈緒美、松川真理子、林直樹、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第62回日本薬学会近畿支部総会・大会
    • 発表場所
      神戸
  • [学会発表] 緑膿菌のべん毛運動を介したムチン層透過機構の解析

    • 著者名/発表者名
      成宮久美、庄司愛、米子佳希、堀西祐多、林直樹、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第62回日本薬学会近畿支部総会・大会
    • 発表場所
      神戸
  • [学会発表] Pseudomonas aeruginosa によるムチン層透過機構の解析

    • 著者名/発表者名
      林直樹、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      第60回日本化学療法学会西日本支部総会 第55 回日本感染症学会中日本地方会学術集会 第82 回日本感染症学会西日本地方会学術集会 共同開催
    • 発表場所
      福岡
  • [学会発表] Pseudomonas aeruginosa は鞭毛運動およびMucDプロテアーゼによって宿主細胞ムチン層を透過する

    • 著者名/発表者名
      林直樹、松川真理子、堀西祐多、中井勝也、庄司愛、吉田奈緒美、米子佳希、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      日本薬学会133年会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] ゲノム情報を基盤としたPseudomonas aeruginosaが産生するムチン分解性プロテアーゼの探索

    • 著者名/発表者名
      高石彩香、林直樹、松川真理子、中井勝也、吉田奈緒美、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      日本薬学会133年会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] Pseudomonas aeruginosa の宿主細胞ムチン層透過における鞭毛の役割の評価

    • 著者名/発表者名
      成宮久美、林直樹、堀西祐多、庄司愛、米子佳希、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      日本薬学会133年会
    • 発表場所
      横浜
  • [学会発表] Pseudomonas aeruginosa の鞭毛と線毛を介した上皮細胞層透過機構の解析

    • 著者名/発表者名
      西澤英之、林直樹、北尾聖哉、出口桜子、皆川周、後藤直正
    • 学会等名
      日本薬学会133年会
    • 発表場所
      横浜

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公開日: 2014-07-24  

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