研究課題
免疫力が低下した宿主において重篤な呼吸器感染症や血液感染症を引き起こすグラム陰性の臨床上重要な日和見感染症起因菌であるPseudomonas aeruginosa(緑膿菌)のゲノム情報を基盤に同定した遺伝子の機能研究成果をさらに発展させ、個々の事象の統合によって、緑膿菌の腸管経由トランスロケーション・メカニズムの全貌を明らかにすることを目的に、次の結果を得た。1. 比較ゲノム研究から同定した機能既知および未知の61の候補遺伝子群について、相同組換え法による遺伝子欠損株および相補株を作成し、その性状を解析したところ、緑膿菌の鉄獲得に働くシデロフォア合成の遺伝子群が、III型エフェクターExoSの産生を制御することによって上皮細胞タイトジャンクションの破綻を引き起こし、上皮細胞モノレイヤの透過に機能すること、さらには宿主血液中での病原性発揮に重要な役割を果たすことを見出した。2. 緑膿菌のexoS遺伝子とmucD遺伝子は、感染時に産生が誘導される炎症性サイトカインIL-8の分解に必要であることを見出した。3. 緑膿菌が鞭毛運動とmucD遺伝子を介したムチン分解との少なくとも2つの機能を協力的に作用させることでムチン層を透過することを明らかにした。本年度はin silico解析によって、ムチン分解プロテアーゼをコードする遺伝子の候補を新たに見出した。以上の結果から、緑膿菌のトランスロケーションのうち、腸管上皮組織で重要な障壁として働くムチン層や強固な上皮細胞間接着を越える緑膿菌の機能、免疫系に対する本菌の生存戦略の一部を明らかにすることができた。これらの結果は、緑膿菌のトランスロケーションによる血液感染症の防止策や治療のための新規抗感染症薬創製のターゲットバリデーションにつながることが期待される。
すべて 2014 2013 その他
すべて 雑誌論文 (8件) (うち査読あり 8件) 学会発表 (10件)
Invest. Ophthalmol. Vis. Sci.
巻: 55 ページ: 240-246
10.1167/iovs.13-13151.
J. Infect. Chemother.
巻: 20 ページ: 121-127
10.1016/j.jiac.2013.09.001.
巻: 20 ページ: 256-261
10.1016/j.jiac.2013.12.001.
巻: 19 ページ: 653-654
10.1007/s10156-012-0536-y.
Antimicrob. Agents Chemother.
巻: 57 ページ: 1978-1981
10.1128/AAC.02374-12.
J. Dermatol. Sci.
巻: 70 ページ: 130-138
10.1016/j.jdermsci.2013.01.004.
FASEB. J.
巻: 27 ページ: 2862-2872
10.1096/fj.13-229054.
Open Biol.
巻: 3 ページ: 130133
10.1098/rsob.130133.