研究課題/領域番号 |
23590526
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研究機関 | 徳島文理大学 |
研究代表者 |
小林 敬子 徳島文理大学, 薬学部, 助教 (90170315)
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研究分担者 |
永浜 政博 徳島文理大学, 薬学部, 教授 (40164462)
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キーワード | ウエルシュ菌イオタ毒素 / エンドサイトーシス / リサイクリングエンドソーム / リソソーム / 結晶化 |
研究概要 |
ウエルシュ菌イオタ毒素は、致死、壊死活性を有し、動物の腸性中毒症の原因毒素と考えられている。イオタ毒素は、アクチンADP-リボシル化活性を示すIaと結合に関与するIbからなり、Ibが細胞膜に結合後、これにIaが結合して細胞内に侵入し、細胞の円形化(ラウンディング)を誘導する。本年度は、細胞への結合と侵入経路の解析、そして、Ibの細胞毒性の検討を行なった。Ibの細胞表面の受容体として、最近、Lipolysis-stimulated lipoprotein receptor(LSR)が報告されたので、Ibとの結合を解析した。LSRをsiRNAによりノックダウン(KD)させると、イオタ毒素の細胞ラウンディングが抑制された。LSR-KD細胞に対するIbの結合を観察すると、この細胞には、Ibが結合しないことが判明した。すなわち、Ibは細胞表面に存在するLSRに結合して、その後、エンドサイトーシスより細胞内に侵入することが判明した。Ibは、これまでに、単独では生物活性を示さないこと報告されていた。そこで、Ib単独の毒性を検討した。MDCK細胞、そして、A431細胞にIbを作用させたところ、Ibは、MDCK細胞には、作用を示さないが、A431細胞に対しては膨化作用を示した。次に、細胞内ATP量の変化を指標として、種々の細胞に対するIbの効果を検討すると、A431細胞、次いで、A549細胞、そして、MDCK細胞の順にATP量の低下が認められ、DLD-1細胞においては、その作用は、全く認められなかった。さらに、Ibの細胞におけるオリゴマー形成能を調べたところ、A431細胞においては、オリゴマー形成能の高いことが判明した。以上から、IbはA431細胞に結合後、細胞膜でオリゴマーを形成し、ATP低下を誘導して、細胞の膨化や核の変化など、Ib単独で作用することが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、イオタ毒素の細胞への結合と侵入、そして、Ib単独による細胞毒性の検討を中心に行った。イオタ毒素は細胞表面に存在するLSRに結合することが明らかとなり、その後、エンドサイトーシスで侵入することが判明した。Ibは、これまで、単独では細胞毒性を示さないと考えられていたが、A431細胞に対して、細胞毒を示すことを明らかにした。イオタ毒素の新しい作用がわかり、順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
イオタ毒素が細胞表面のLSRに結合して、細胞への侵入時に、どのようなシグナル伝達系が活性化されているのかを明らかにする。さらに、Ibによる細胞毒性が、いかなる細胞死の形態を示すかを検索する。
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次年度の研究費の使用計画 |
イオタ毒素の作用機構を細胞生物学的な手法で検討するため、試薬や器具などの消耗品に多くを使用する。成果発表のため、学会発表での出張費を使用する。
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