研究課題
1980年から2008年にわが国で分離されたレジオネラ症の主要な起因菌であるL. pneumophila臨床分離株86株について、sequence-based typing (SBT)法により、7種の遺伝子の一部領域の塩基配列を決定し、遺伝子型別を行っていたが、新たに2012年までの分離された177株を追加し、併せて263株について解析を行った。neuA遺伝子が増幅しなかったため型別できなかった10株を除く253株は128種類の遺伝子型(ST)に分けられ、SBT法は遺伝子型別法として有用であることが示された。感染源についてみると、43%が浴槽水と推定・確定されていて、他に空調、加湿器、シャワー、畑仕事などが感染源と推定・確定されているが、50%は感染源不明だった。血清群1の株についてminimum spanning tree 解析を行った。昨年度、血清群1の環境分離株の遺伝子型別を行い、8つの遺伝子型グループを形成することを見出した(浴槽水分離株が多いグループB-1、B-2、B-3、冷却塔水分離株が多いグループC-1、C-2、土壌由来株が多いS-1、S-2、S-3)。今年度調べた血清群1の臨床分離株の遺伝子型についても、minimum spanning tree 解析の結果、それらのグループと対応させることができた。Bグループに属する臨床分離株は実際に浴槽水が感染源のものが多かった。また、Sグループに属する臨床分離株は感染源不明のものが多く、土埃などからの感染、あるいは土壌が混入している水からの感染が考えられた。他に新しい1つのグループ(感染源が不明のものが多いためUグループと名付けた)が形成され、まだ認識されていない感染源があることも示唆された。
2: おおむね順調に進展している
今年度は臨床分離株の遺伝子解析を行い、環境分離株の遺伝子型によるグループと対応させることができ、実際に浴槽水分離株が多いグループに属する臨床分離株は浴槽水が感染源のものが多いことが分かった。また、土壌分離株が多いグループに属する臨床分離株は感染源不明のものが多く、土埃などが混入するようなまだ考慮されていない感染源の探索の必要性が明らかになった。さらに環境分離株の解析からは見つからなかった新しい遺伝子型グループが明らかになった。
レジオネラ症の感染源となる可能性のある噴水などの修景水や、給湯水、シャワー水など、まだ調べていない環境分離株の収集を行い、解析を行う。また、SBT法に含まれていない遺伝子についても解析を行う。
引き続き遺伝子解析のための試薬類やプラスチック器具類に研究費を使用する。
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Appl. Environ. Microbiol.
巻: 12 ページ: 4263-4270
10.1128/AEM.06869-11