研究課題/領域番号 |
23590532
|
研究機関 | 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター) |
研究代表者 |
岡田 全司 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (40160684)
|
研究分担者 |
鈴木 克洋 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (00206468)
露口 一成 独立行政法人国立病院機構(近畿中央胸部疾患センター臨床研究センター), その他部局等, その他 (00359308)
吉田 栄人 金沢大学, 薬学系, 教授 (10296121)
大原 直也 岡山大学, 医歯(薬)学総合研究科, 教授 (70223930)
|
キーワード | HSP65タンパク / Granulysin / granulysinレセプター / キラーT細胞分化 / 結核予防ワクチン / 結核治療ワクチン / ポジティブフィードバック / レセプター単離 |
研究概要 |
【研究の目的】 (1) 我々が世界に先駆けて発見した強力な結核予防効果・治療効果を示す新しいHVJ-エンベロープ/HSP65DNA+IL-12DNAワクチン(略してHSP65ワクチン)及びグラニュライシン(granulysin(Gra):キラーT由来結核菌殺傷タンパク)ワクチンの二種類の結核ワクチンによる新しいキラーT細胞分化機構を解明するとともにこれらのレセプターの単離解明の研究を行うことを目的。(2) GraによるキラーT分化機構ならびにGraレセプターは不明であり、Graレセプターの単離及び遺伝子クローニングを行う。(3) Gra-Graポジティブフィードバック経路及びHSP65ポジティブフィードバック経路を証明する。 【研究実績の概要】 (1)世界に先駆けてHSP65ワクチン及び15K Graが強力なキラーT分化活性を示すことを明らかにした。GraはIL-6によるキラーT分化に関与するが、一方、HSP65ワクチンはIL-6と異なるキラーT分化過程の活性化が示された。(2) 15K GraはキラーT分化因子としてキラーT前駆細胞に作用した。このことよりT細胞にGraレセプターの存在が強く示唆された。(3) Graは産生するキラーTを中心にGra-Graポジティブフィードバックループを形成して、結核菌に対する抵抗性を増強する経路が存在することが示唆された。(4) キラーTより産生されるKiller secretory protein of 37 kd(KSP37)蛋白とGraはキラーT分化相乗効果を示した。(5) 一方、HSP65ワクチンはIL-15とキラーT分化を相乗的に誘導し、HSP65ポジティブフィードバックの存在が示唆された。(6) Gra TgマウスはHSP65抗原に対するキラーT分化を増強したことより、二種のワクチンの相乗的キラーT分化と治療効果が示された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1.マウスの系でHVJ-エンベロープ/HSP65 DNA + IL-12 DNA結核治療ワクチンは皮内投与方法により、今までの筋肉内投与方法や皮下投与よりも強力な結核治療効果を示し、キラーTも活性化することを明らかにしたことより、HSP65ワクチンの生体内キラーT分化解明が進展した。 2.サルでもこの治療ワクチンの皮内投与は進展中。カニクイザルでHSP65 DNA+IL-12 DNAワクチン皮内投与方法は従来の筋肉内投与方法に比較して、より強力な延命効果、赤血球沈降速度の改善が認められた。 3.granulysin Tgマウス及びKSP37 Tgマウスを用いてキラーT分化解明が進展したこと。 4.酵母two-hybrid法を用い、granulysinと結合するgranulysinレセプターを解析する手法が確立されたこと。ヒト・キラーT細胞cDNAを作成したこと。 5.脾細胞やリンパ節T細胞のcDNAを用いても、上記酵母two-hybrid法にてgranulysinレセプターを解析中。
|
今後の研究の推進方策 |
1.ヒトTクローン確立方法(PNAS)を用い、granulysinレセプター発現クローンよりレセプターを解明する。我々が最初に報告したヒトT細胞クローンの確立(Okada, J.E.M1983,PNAS1981, J.I 1982:ヒトT細胞ハイブリドーマ及びIL-2存在下でのヒトT細胞クローンの確立)法を用い、15Kgranulysinに対するレセプターを多く発現するT細胞クローンを確立する。15K granulysinにFITCラベルし、レセプター高発現T細胞クローンを確立する。この細胞の蛋白分画を用い、15K granulysinと結合するタンパクを種々のカラムを用い単離する。 2.種々のT細胞cDNAを用いて酵母two-hybrid法により、granulysinレセプター単離を行う。 3.Granulysinレセプター発現抑制ヒトT細胞作成:抗granulysin抗体及びsiRNAによるgranulysinレセプターを介する下流域シグナルの解明。 4.HSP65タンパクによるMφスキャベンジャーレセプターを介しての免疫応答活性化。 MφスキャベンジャーレセプターSRAノックアウトマウス[SRA(-/-)]、Lox-1(endocytic receptor)(-/-)マウスでHSP65ワクチンの作用機構(クロスプレゼンテーション等)を解析する。 5.granulysinレセプター遺伝子を用い、キラーT分化に関する蛋白発現の解析を行う。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1.Granulysinレセプター遺伝子の単離と遺伝子クローニング:酵母を用いたtwo-hybrid systemで解明する。(a) granulysinをGAL4-DNA binding domainとの融合タンパクとして発現するプラスミドを構築する。(b) ヒトT細胞、ヒトMφ、ヒト樹状細胞(刺激有る無し)のcDNAライブラリーをGAL-4-activator domain融合タンパクで発現するように構築する。(c) granulysinとgranulysinレセプターが結合した時にレポーターのlaczの発現量がup。lacz発現量の多いクローンの遺伝子クローニングを行い、レセプターを解明する。これらの方法を用いgranulysinレセプターの単離と遺伝子クローニングを行う。 2.さらに、すでに酵母に封入したヒト細胞cDNA及び、ヒトリンパ節由来のcDNAを得た。したがってこれらを上記のtwo-hybrid systemに用い、granulysin遺伝子の単離とクローニングを行う。(ヒト・キラーT細胞クローンcDNAを作成し、granulysinレセプターの可能性がある遺伝子を得る手法を確立したことより、種々のヒトcDNAを用いて行う。) 3.HSP65タンパクによる免疫応答活性化。HSP65ワクチンの作用機序をgranulysinワクチン、KSP37ワクチンを組み合わせ、多剤耐性結核・XDR-TBに対する相乗的キラーT分化機構の解明と治療効果を解析する。
|