研究課題/領域番号 |
23590534
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
吉山 裕規 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (10253147)
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研究分担者 |
地主 将久 北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 准教授 (40318085)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | ウイルス / 癌 |
研究概要 |
EBウイルス(EBV)はヒトの腫瘍の原因となるヘルペスウイルスである。EBV持続感染細胞よりEBV関連腫瘍が生じることより、持続感染細胞で発現するEBV潜伏感染遺伝子が腫瘍の形成と腫瘍形質の維持に重要である。申請者らは、EBVのBNLF2aおよび BNLF2bが新しい潜伏感染遺伝子であることを発見した。両遺伝子のダブルノックアウトEBVを作製し、B細胞をトランスフォームしたところ、野生型EBVでトランスフォームした細胞に較べ、増殖速度が低下した。BNLF2aとBNLF2b遺伝子のいずれか一方、あるいは両方が、EBVによる細胞腫瘍化活性の一端を担っていると考えられた。 ダブルノックアウトEBVによるトランスフォームリンパ球と、野生型EBVによるトランスフォームリンパ球において、培養上清中のサイトカインプロファイルを調べた。BNLF2aまたはBNLF2b遺伝子が発現しないことにより、Bリンパ球からの炎症性サイトカインとケモカインの産生に大きな変化が観察された。 ダブルノックアウトEBVのみが感染したAkata B細胞も、ノックアウトEBV-トランスフォームリンパ球同様、増殖速度が低下した。そこで、ダブルノックアウトEBV 感染Akata細胞にBNLF2aとBNLF2bを、個々に発現させたところ、BNLF2bの発現によって増殖速度が回復した。抗IgG抗体を用いてAkata細胞にアポトーシスを誘導した。その結果、ダブルノックアウトEBV 感染Akata細胞は、野生型EBV 感染Akata細胞に較べ、アポトーシスに陥り易いが、ダブルノックアウトEBV 感染Akata細胞にBNLF2bを発現させることにより、アポトーシスが抑制されることもわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ダブルノックアウトEBVによるトランスフォームリンパ球にBNLF2a, BNLF2b遺伝子を発現させることにより、BNLF2aおよびBNLF2bのトランスフォームリンパ球における機能を解析しようと試みたが、トランスフォームリンパ球にBNLF2a, BNLF2b遺伝子を安定的に発現させることが困難であった。これにより実験の進行がやや遅れた。
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今後の研究の推進方策 |
ダブルノックアウトEBVによるトランスフォームリンパ球にBNLF2a, BNLF2b遺伝子を安定的に発現させることが困難であるため、他のBリンパ球株にダブルノックアウトEBVを感染させ、BNLF2a, BNLF2b遺伝子を個々に戻すことによって、それぞれの作用分子機構を明らかにする。また、BNLF2bのみを破壊した組換えEBVを作製することで、BNLF2bの生物学的な活性を明らかにする。 Akata(-)細胞を用いてBNLF2bと相互作用するタンパク質を回収し、同定する。BNLF2bのC末端にHaloタグを付加した発現ベクターをAkata(-)細胞に発現させ、Halo linkを用い、プルダウンアッセイを行う。結合タンパク質をSDS-PAGEで分離後、バンドを切り出して、質量分析に供する。 BNLF2bのモノクローナル抗体を作製し、免疫染色やウェスタンブロッティング法の検出感度と信頼度を高めるとともに、EBV感染細胞におけるBNLF2b分子と相互作用する蛋白質の決定と機能解析に供する。
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次年度の研究費の使用計画 |
23年度未使用額の発生理由 BNLF2b蛋白に対するモノクローナル抗体の作製を開始したが、一次スクリーニングで満足な抗体クローンを得ることができず、予定していた作製費用を一部しか使用しなかったため。24年度の使用予定 23年度未使用額、65万8千400円のうち、55万8千400円を、引き続き行うモノクローナル抗体作製費用に充て、10万円を米国フィラデルフィアで開催される第5回国際EBV研究会の参加費用として、当初予定の25万円に加えた35万円として使用する予定である。
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