研究概要 |
(1) HeLa細胞における蛋白発現系において, PIV5のF蛋白の5つのドメイン(B, M1, M2, M3, M4)をSV41のF蛋白の相同ドメインで置換したキメラF蛋白は, SV41のHN蛋白と共発現させると膜融合を誘導できるが, PIV5のHN蛋白との共発現では膜融合を誘導できないことを明らかにした。この5つのドメイン内にはSV41のF蛋白由来のアミノ酸が41個含まれていたので, (HeLa細胞よりも細胞融合を起こしやすいことが判明した)BHK細胞を用いて変異解析を行った結果, SV41のHN蛋白に対する特異性を失わせることなく, これを26個にまで減らすことに成功した。すなわちこれらのアミノ酸群(全蛋白の5%に相当)がHN蛋白との特異的な機能的相互作用に関わっていることを明らかにした。(2) 上記の知見に基づいて光架橋法(RSPC)によるHN-F相互作用解析を行うために,まずPIV5のF蛋白やM(1+2)を単独で発現させたBHK細胞に光反応基を持つアミノ酸を添加し, de novoに合成されるF蛋白にこれらのアミノ酸を代謝的に取り込ませた。発現操作開始後12時間に紫外線を照射してSDS-PAGEおよびウェスタンブロットで解析したところ, いずれの蛋白でも3量体が検出された。すなわち,本来3量体であるF蛋白のモノマー間の架橋をRSPC法によって実現することができた。そこでM(1+2)とSV41のHN蛋白を共発現させたところ,予想に反して両蛋白の架橋は検出されなかった。HN蛋白(4量体)とF蛋白(3量体)の一対一複合体はかなりの高分子であるが, 昨年解明されたHN蛋白の結晶構造から, HN蛋白一分子あたり,二分子のF蛋白が結合しうることが明らかとなっており, 架橋によって解析限界を越えた超高分子が生成した可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
光架橋法(RSPC)における紫外線照射時間や電気泳動の条件を改善するとともに, ゲル濾過や密度勾配遠心法などの電気泳動法以外の検出系を用いることにより, HN-F複合体の検出を試みる。なお,平成24年度の研究計画であるBimolecular Fluorescence Complementation (BiFC)によるHN-F複合体の検出には,平成23年度中に着手している。
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次年度の研究費の使用計画 |
RSPCに用いる主な消耗品: 光架橋性を持つ2種のアミノ酸(L-photo-Methionine, L-photo-Leucine), MethionineとLeucineを含まない培養液, 透析処理済み牛胎児血清, 蛋白電気泳動用試薬類, ウェスタンブロット用試薬類BiFCに用いる主な消耗品: PCR産物クローニングキット, DNAライゲーションキット, 制限酵素類, 細菌培養用培地類 RSPCおよびBiFC双方に用いる主な消耗品:細胞培養用培地類, 牛胎児血清, 細胞培養用プレート類
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