研究概要 |
(1) 昨年度の本研究により, PIV5のF蛋白の頭部領域にある21個のアミノ酸をSV41のF蛋白の対応アミノ酸で置換したキメラF蛋白(No.36)は, PIV5のHN蛋白とではなく, SV41HNのHN蛋白と機能的に相互作用して細胞融合を誘導することを明らかにした。一方, HN蛋白に関しては, 頭部ではなくストーク領域がF蛋白との機能的相互作用に関与していると考えられている。そこで, SV41のHN蛋白の頭部を欠損させた短縮型HN蛋白にFLAGタグを付加したもの(SV41HN HL-FLAG)を作製し, その細胞融合促進能を解析したところ, PIV5のF蛋白とではなくSV41HNのF蛋白と機能的相互作用して細胞融合を誘導したが, 予想に反してNo.36との機能的相互作用は認められなかった。また, SV41のHN蛋白の頭部を欠損させた短縮型HN蛋白にFLAGタグを付加したもの(PIV5HN HL-FLAG )を発現させた場合には, SV41HNのF蛋白とではなく, PIV5のF蛋白と機能的相互作用して細胞融合を誘導し, 予想どおりNo.36との機能的相互作用は認められなかった。しかし興味深いことに, PIV5HN HL-FLAGからFLAGタグを除いたもの(PIV5HN ST)は, No.36と機能的相互作用して細胞融合を誘導した。 (2) SV41のHN蛋白のストーク領域とヒトパラインフルエンザウイルス2型(hPIV2)の頭部領域をもつキメラHN蛋白は, hPIV2のF蛋白とではなくSV41HNのF蛋白と機能的相互作用して細胞融合を誘導したが, No.36との機能的相互作用は認められなかった。 以上の結果から, HN蛋白のストーク領域のみでなく頭部領域もF蛋白と機能的相互作用に関わっていること, また, この頭部領域がストーク領域の立体構造あるいは可塑性に影響を与えることにより, F蛋白と機能的相互作用を制御していることが示唆された。
|