• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2011 年度 実施状況報告書

感染動物モデル実験系樹立のためのカニクイザル抗HIV因子解析

研究課題

研究課題/領域番号 23590541
研究機関大阪大学

研究代表者

中山 英美  大阪大学, 微生物病研究所, 助教 (70324845)

研究期間 (年度) 2011-04-28 – 2014-03-31
キーワードTRIMCyp / TRIM5 / cynomolgus monkey / HIV-1
研究概要

Gagと相互作用する感染抵抗性因子としてTRIM5αと、Cyclophilin Aが知られている。近年、TRIM5遺伝子へのサイクロフィリンA遺伝子の挿入が、旧世界ザルで起きていることが報告された。そこでカニクイザルのTRIM5遺伝子を調べたところ、TRIMCypの頻度がアカゲザルに比較して高いことが明らかとなった。また、TRIMCyp遺伝子を持つ個体ではTRIMCypのCypA部分の配列に、66番目のアミノ酸がアスパラギン酸(D)でかつ143番目がリジン(K)のDKハプロタイプと、66番目のアミノ酸がアスパラギン(N)でかつ143番目がグルタミン酸(E)のNEハプロタイプの2つのハプロタイプが存在することが明らかになった。TRIMCypタンパク質の抗ウイルス効果を調べたところ、DKハプロタイプのTRIMCypはアカゲザルTRIMCypとは異なりHIV-1の感染を抑制し、HIV-2およびSIVmacの感染は抑制しなかった。一方でNEハプロタイプのTRIMCypはアカゲザルTRIMCypと同様に、HIV-1よりもむしろHIV-2の感染を強く阻害したが、SIVmacの感染は阻害しなかった。TRIMCypの結合は、いわゆるCypA結合ループとして以前から知られているカプシドのN末端から数えて4番目と5番目のαヘリックス間のループ(L4/5)と考えられる。これまでに作成されたサル指向性HIV-1はL4/5をSIVmac由来のものに置き換えてあるが、いまだカニクイザルTRIM5αからの逃避は完全ではない。しかし、DKおよびNEの両方のハプロタイプのカニクイザルTRIMCypによる抑制は回避していることが明らかとなった。以上の結果から、今後、サル指向性HIV-1の感染実験はTRIMCyp変異を両染色体にもつ個体を用いることが望ましいと考えられた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

感染初期過程に関わる宿主因子として、これまでTRIM5αに着目してきたが、カニクイザルにおいてはTRIM5遺伝子のTRIMCyp変異の頻度が高く、TRIMCypタンパク質の抗ウイルス効果のほうが重要であることが明らかとなり、研究は着実に進展している。

今後の研究の推進方策

今年度、サルにおけるHIV感染抑制因子についての詳細が明らかになり、TRIMCypを回避するHIV-1の作成に成功している。しかし、TRIMCypによる感染抑制を完全に回避してもなお、HIV-1のサル細胞における増殖は、ヒト細胞における増殖に比較して悪いことが改めて確認された。次年度は感染性の向上を目指したウイルスの改変と平行してヒト細胞由来の感染を促進する因子の探索を行う。

次年度の研究費の使用計画

今年度末にレトロウイルスの作成を委託したが、まだ完成していない(納品されていない)ために支出が次年度予定になった。H24年度は計画に変更はないので申請書に沿って執行する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2012 2011

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (3件)

  • [雑誌論文] Geographic, Genetic and functional diversity of antiretroviral host factor TRIMCyp in cynomolgus macaque (Macaca fascicularis).2012

    • 著者名/発表者名
      Saito A, Kono K, Nomaguchi M, Yasutomi Y, Adachi A, Shioda T, Akari H, Nakayama EE
    • 雑誌名

      Journal of General Virology

      巻: 93 ページ: 594-602

    • 査読あり
  • [雑誌論文] TRIM5α and species tropism of HIV/SIV.2012

    • 著者名/発表者名
      Nakayama EE, Shioda T
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 3 ページ: 13-13

    • DOI

      10.3389/fmicb.2012.00013

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A novel monkey-tropic HIV-1 derivative encoding only minimal SIV sequences can replicate in cynomolgus monkeys.2011

    • 著者名/発表者名
      Saito A, Nomaguchi M, Iijima S, Kuroishi A, Yoshida T, Lee Y, Hayakawa T, Kono K, Nakayama EE, Shioda T, Yasutomi Y, Adachi A, Matano T, Akari H
    • 雑誌名

      Microbes and Infection

      巻: 13 ページ: 58-64

    • 査読あり
  • [雑誌論文] A Single Amino Acid of Human Immunodeficiency Virus Type 2 Capsid Protein Affects Conformation of Two External Loops and Viral Sensitivity to TRIM5alpha.2011

    • 著者名/発表者名
      Miyamoto T, Yokoyama M, Kono K, Shioda T, Sato H, Nakayama EE
    • 雑誌名

      PLoS ONE

      巻: 6 ページ: e22779

    • 査読あり
  • [学会発表] 宿主遺伝子多型とHIV感染症2011

    • 著者名/発表者名
      中山英美
    • 学会等名
      第25回エイズ学会学術集会・総会(招待講演)
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011年12月1日
  • [学会発表] サル指向性HIV-1への感受性に影響を与えるマカクサルTRIM5遺伝子の多様性.2011

    • 著者名/発表者名
      齋藤暁、河野健、中山英美、足立昭夫、野間口雅子、保富康宏、俣野哲朗、塩田達雄、明里宏文
    • 学会等名
      第25回エイズ学会学術集会・総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      2011年12月2日
  • [学会発表] 抗レトロウイルス療法副作用の発症に関わる宿主因子2011

    • 著者名/発表者名
      中山英美
    • 学会等名
      第25回エイズ学会学術集会・総会
    • 発表場所
      東京
    • 年月日
      20111130-1202

URL: 

公開日: 2013-07-10   更新日: 2013-09-11  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi