研究課題
昨年度、サル指向性HIV-1の感染を抑制する因子として、カニクイザルにはTRIMCypとTRIM5aの2種類のアレルが存在することを示した。作成したサル指向性HIV-1はカニクイザルTRIM5aの感染抑制を回避することは適わなかったが、TRIMCypによる感染抑制は完全に回避することがin vitroの実験系において示した。本年度は、サル指向性HIV-1をTRIM5アレルを両方の染色体上に持つ個体(TRIM5a-homo)3頭とTRIMCypアレルを両方の染色体上に持つ個体(TRIMCyp-homo)6頭に感染させ、経時的に血液中のウイルス量を測定した。その結果、血中ウイルス量はTRIM5a-homoではピーク値が10^3 コピー/mL 程度であったのに対して、TRIMCyp-homoでは10^5 コピー/mLと高かった。また、病原性の指標の1つとして測定した末梢血中のCD4陽性T細胞数は、TRIMCyp-homo個体において減少が見られ、感染成立の指標として、抗HIV-1抗体の誘導も強く見られた。血中のウイルス量は、TRIMCyp-homo個体においても、感染後6-8週で検出限界以下となったが、抗CD8抗体の投与によりCD8陽性T細胞が減少するに伴って、再び血中ウイルス量の増加が観察され、TRIMCyp-homo個体においてサル指向性HIV-1は染色体ゲノムに組み込まれた状態で保持されており、CD8細胞による免疫により感染がコントロールされていることが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
本年度は、サル個体において、確かにサル指向性HIV-1が増殖が可能なことを示し、HIV-1感染サルモデル実験系が成立したことをが明らかとなった。
今年度、TRIMCyp-homoの個体を選ぶことにより、カニクイザルにおいてHIV-1が増殖可能となったが、ウイルスが血液中に常に検出される持続感染の状態にはならなかった。サルTRIMCypによる感染抑制を回避するように、HIV-1のカプシド領域に変異を導入したために、ウイルスの増殖力そのものは親株よりも低下していることが原因と考えられる。次年度は、感染性の向上を目指したウイルスの改変と平行してヒト細胞由来の感染促進因子の探索を行う。
計画に変更はなく、申請書に沿って執行する。
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Journal of General Virology
巻: 未定 ページ: 未定
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