研究課題
TRIM5αはアカゲザルで発見された抗HIV-1因子である。TRIMCypはTRIM5とサイクロフィリンAの融合蛋白質でやはり抗HIV-1活性を持つ。ワクチン開発に必須のHIV-1感染動物モデル実験系を樹立するためには、サルTRIM5αやTRIMCypの性質を調べ、これらの抗HIV-1因子を回避するHIV-1を作製する必要がある。昨年度はHIV-1のカプシドとvifを改変し、TRIMCyp遺伝子を両染色体に持つカニクイザル個体に感染させることで一定の増殖が得られたものの、この改変HIV-1の増殖はサル免疫不全ウイルスSIVmac239の増殖には及ばなかった。そこで本年度はカプシドにランダムな変異を導入したライブラリーを作成し、TRIMCypあるいはTRIM5αを高発現する細胞に感染させて、耐性能を持ち増殖効率の良いウイルスの分離を試みた。独立した2回の実験から得られたカニクイザルTRIMCyp耐性株に認められた変異は、H87R、A88G、P90D、P93Aの組み合わせとH87R、G89E、A92T、P93Tの組み合わせであった。それらの変異を導入したクローンウイルスは確かにカニクイザルTRIMCypに対する耐性は確認できたが、ウイルスの増殖能としては、昨年度の実験に用いたものとほぼ同程度に留まった。現在は、遅れて回収することができたカニクイザルTRIMT5α高発現下で増殖するウイルスの変異を同定中である。カニクイザルTRIM5αからの完全逃避変異を持つHIV-1はこれまで報告がないので、新しい変異HIV-1の候補として期待が持てる。
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PLoS one
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