研究課題/領域番号 |
23590543
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
デン リン 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), グローバルCOE研究員 (40437497)
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研究分担者 |
堀田 博 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40116249)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | C型肝炎ウイルス / 感染症 / 癌化 / シグナル |
研究概要 |
C型肝炎ウイルス(HCV)は肝臓に高率に慢性の炎症を起こし、数十年を経て肝細胞癌を引き起こすが、HCV感染による肝癌発症の分子機序は未だ完全に解明されていない。HCV非構造タンパク質NS5Aはウイルスゲノム複製複合体の構成因子であるだけでなく、HCVの病原性、粒子産生及びインターフェロン抵抗性に重要な役割を果たすことが知られている。 本研究では、HCV NS5Aと相互作用する新規宿主タンパク質を同定し、その機能解析を通してHCVの複製・発癌機構におけるNS5Aの新たな機能について検討し、以下の結果を得た。 (1) タンデムタグ免疫沈降法・質量分析法により、新規NS5A結合因子として、ヒストンメチル基転移酵素SMYD3 (SET- and MYND-domain containing 3)を同定した。(2) 一過性発現NS5A及びHCV全長RNAレプリコン細胞、HCV感染細胞におけるNS5Aが内在性SMYD3と結合することが分かった。(3) HCV全長RNAレプリコン細胞におけるNS5Aは内在性SMYD3と細胞質で共局在することが分かった。また、NS5AとSMYD3を共発現させた場合、SMYD3の核から細胞質への移行が見られた。(4) HCV感染により、ヒストンH3の発現量及びヒストンH3のメチル化程度が低下しており、その低下は、SMYD3の過剰発現により回復した。 以上の結果から、HCV NS5AはSMYD3と相互作用することにより、SMYD3のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性に何らかの影響を与え、肝細胞の癌化あるいはその他の病原性を引き起こすと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの研究でHCV複製及び粒子産生に及ぼすSYMD3の影響は見られなかったが、HCV感染によるヒストンH3の発現量及びヒストンH3のメチル化の低下を見出せた。これらの成果は当初の計画通りであり、評価できると思われる。今後さらに詳細なメカニズムの解明を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
NS5AとSMYD3との相互作用が認められたことから、今後以下の点について研究を進める。(1) NS5AとSMYD3との結合に関わる結合責任領域を同定する。(2)NS5AとSMYD3を共発現させて、SMYD3のヒストンメチルトランスフェラーゼ活性に及ぼすNS5Aの影響を調べる。(3)SMYD3は約80個癌原遺伝子、細胞周期調節遺伝子等の発現を制御することが報告されている。従ってNS5AとSMYD3を共発現させて、RT-PCRにSMYD3のターゲット癌原遺伝子であるJun D、V-myc、V-crk及びV-maf等のmRNA 発現レベルを調べる。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成24年度の研究費は、免疫沈降、ヒストンメチルトランスフェラーゼ活性測定及びリアルタイムPCRを用いた解析に必要な抗体、試薬等に使用する予定である。 また、この成果を発表するために、国際及び国内学会に参加する旅費及び学術雑誌への投稿料にも使用する予定である。
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