研究課題/領域番号 |
23590545
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
有海 康雄 熊本大学, エイズ学研究センター, 准教授 (60303913)
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研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
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キーワード | 国際研究者交流 / スイス |
研究概要 |
今年度は、HCV感染に伴う宿主の細胞質スペックルP-body及びstress granuleの動的変化とHCV感染における役割について明らかにすることを目的として実験を行い、以下のような成果を得た。(1)HCV感染24時間までは、非感染細胞と同様にDDX6などのP-body因子はP-bodyにドット状に局在し、G3BP1などのstress granule因子は細胞質に散在していた。(2)HCV感染により、感染36時間後に宿主細胞内にstress granuleの形成が誘導された。(2)HCV感染により、感染48時間以降、stress granule因子であるG3BP1、Ataxin2そしてpoly(A)-binding protein 1 (PABP1)はリング状の構造体を形成し、HCV Coreと共局在した。また、このリング状構造体の中心が脂肪滴であり、HCV感染に伴いstress granule因子が脂肪滴にリクルートされることが観察された。さらに、HCV感染に伴いP-body因子であるDDX6やAgo2も脂肪滴周辺にリクルートされ、Coreとも共局在した。(3)外来的なストレス(熱ショックや亜ヒ酸ナトリウム処理)に応答して、HCV感染細胞内に新規なstress granuleの形成が誘導されなかった。(4)DDX6やLsm1などのP-body因子やG3BP1、Ataxin2及びPABP1などのstress granule因子はHCVの生活環に必要な宿主因子であることが判明した。以上の結果より、HCV感染により宿主細胞内にストレス応答が生じ、P-body因子やstress granule因子がHCV産生の場である脂肪滴周辺にハイジャックされること、そしてこれらP-body因子やstress granule因子がHCVの複製に必要な宿主因子であることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
HCVやHIV-1感染に伴う宿主細胞の細胞質スペックルや核内スペックルの局在変化とウイルス感染における役割について明らかにすることを目的としているが、本年度、HCV感染に伴いP-bodyやstress granuleの局在が変化すること、これらP-body因子やstress granule因子がHCVの生活環に関与することを明らかにすることができた。
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今後の研究の推進方策 |
抗HIV-1因子として知られるAPOBEC3GもP-bodyに局在することが知られているので、APOBEC3Gによる抗HIV-1作用にDDX6やMOV10などのP-body因子が関与しているのか明らかにする。特にAPOBEC3GとP-body因子の相互作用について解析を行う。また、APOBEC3GやMOV10のHCV感染に対する影響についても検討する。さらにHIV-1ゲノムが宿主ゲノムへインテグレーションされる際に核内スペックルや核内因子がどのように関与しているのか検討したい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度の研究費はP-body因子のHCV及びHIV-1の複製に与える影響やHIV-1インテグレーション機構を解析するのに必要な抗体、siRNAなどの試薬や細胞培養のためのプラスチック器具等の購入に充てたい。さらにこれまで得られた研究成果を学会や論文で発表するための旅費や論文投稿費用に充てる。
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