研究課題
シチジン脱アミノ化酵素APOBEC1は、ヒトでは小腸でのみ発現がみられ、コレステロール代謝に重要なアポリポタンパク質(apo)B mRNAのエディティングに関与することが知られてきた。我々は、マウスやウサギでは小腸、肝臓のみならず脾臓、胸腺、卵巣、精巣など様々な組織でAPOBEC1 mRNAが強く発現していることを見出した。MuLVを接種したマウスで複製したMuLVゲノムには高頻度に脱アミノ化反応による変異がみられるが、それがAPOBEC3ではなくAPOBEC1によるCからUへのエディティングであることが示された。このin vivoの実験結果に加え、我々がこれまでに明らかにしたin vitroにおけるAPOBEC1の抗HIV、抗レトロエレメント活性、さらにはAPOBEC1 mRNAの発現パターンも, 小動物においてAPOBEC1は外来レトロウイルスや内在性レトロエレメントを標的とした強力な自然防御機構として機能していることを示唆している。この可能性を検証するため、APOBEC1ノックアウトマウスにおける内在性レトロエレメントの細胞内複製を解析中である。ヒト・マウスゲノムには何百万年も昔にレトロエレメントがはいりこみ、ゲノム進化の原動力となってきた。LTR型の内在性レトロウイルスだけでも、ヒト・マウスゲノムの10%近くを占める。その多くが不活性化変異の蓄積によって複製能力を失っているが、マウスのIAPやMusD配列の一部は転移能力を残している。野生型とAPOBEC1ノックアウトマウスにおけるIAPやMusDなど内在性レトロウイルス・レトロエレメントの複製能を解析中である。本研究によりLTR型の内在性レトロウイルスと起源を同じくし、その複製サイクルにも共通の点が多いHIVが、げっ歯類やウサギなどの実験用小動物で十分に複製できない分子基盤がより明確になると期待される。さらに種間のウイルス伝搬を阻止する自然免疫機構の理解に貢献できるものと考えている。
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