研究課題/領域番号 |
23590547
|
研究機関 | 鹿児島大学 |
研究代表者 |
小原 恭子 鹿児島大学, 農学部, 教授 (20225478)
|
研究期間 (年度) |
2011-04-28 – 2014-03-31
|
キーワード | C型肝炎ウイルス / Bリンパ腫 / A20 / microRNA |
研究概要 |
I-1.HCVのB細胞直接作用解析用の細胞株を樹立した。I-2. RzCD10Creマウス(全長HCVのB細胞発現マウス)において、HCVの発現によりTgマウス体内でのIgG産生量に有意な変化はなかった。また、ウェスタンブロット解析により抗体親和性の顕著な変化は認められなかった。メモリーB細胞をFACS解析でCD19+,CD27+の細胞の割合で算出したが、RzCD19Creマウスにおける有意な上昇はなかった。I-3. 生後半年以内のRzCD19Cre(HCV+),CD19Cre(HCV-)マウスのB細胞を分離してRNAを精製し、マウス全ゲノムのマイクロアレイ解析を行った。II-1. RzCD19CreマウスのBリンパ腫と、腫瘍を持たないRzCD19CreマウスのB細胞から RNAを精製し、同様にマイクロアレイ解析を行った。がん抑制因子A20については、水落博士(国立感染研)らと共同研究により解析しており、腫瘍細胞における発現低下が確認されている。さらに、Peveling-Oberhag博士(独)のグループはHCV関連Bリンパ腫患者におけるmicroRNAの解析を報告しているが、RzCD19CreマウスのBリンパ腫発症に関連するmicroRNAの解析の共同研究を開始した。II-2. Soluble IL-2Rα(sIL-2Rα)の発現を生後経時的に解析した結果、腫瘍を発生する前のRzCD19Creマウスには顕著な変化が見られなかった。III-1.本年度はまずB細胞増殖因子(BAFF)について解析をおこなった。生後一年以内ではRzCD19Creマウスで有意な差がないものの、生後2年の♀マウスでは有意な上昇が観察された。III-2. HCVをpoly(IC)で発現できるMxCreマウスでの肝癌の発症にはIL-6, TNFα産生が関連していた。Bリンパ腫発症との関連は解析中である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
HCVのBリンパ球に対する直接作用の解析やBリンパ腫発症要因の同定に関する研究は、マイクロアレイ解析も含め、当初の研究計画通りに進行している。炎症等の外的因子とBリンパ腫誘導との関連についても、B細胞増殖因子との関連が新たに見いだされている。それらに加え、HCV誘導性Bリンパ腫発症におけるがん抑制因子A20の役割に関する共同研究を国立感染症研究所と開始した。Bリンパ腫におけるA20の発現抑制が観察され、今後の研究進展が興味深い。さらに、HCV感染患者においてその病態やBリンパ腫発症と関連するmicroRNAに関して長年研究を続けているドイツのJohann Wolfgang Goethe大学のグループとの共同研究を新たに開始した。これは、RzCD19CreマウスのBリンパ腫発症に関与するmicroRNAに関する研究であり、新たな知見が得られる事が期待される。以上の成果から、当初の予定以上に研究が進捗していると評価している。
|
今後の研究の推進方策 |
HCVゲノム中のBリンパ腫発症における責任遺伝子については、細胞株も併用して解析を進める。また、Ig産生量やメモリーB細胞に対してのHCVの作用には、これまでのところ有意な結果が得られていない。IgG産生とメモリーB細胞とBリンパ腫発症との関連はこれまでの解析では認められていない。また、sIL-2Rαの産生は腫瘍のないRzCD19Creマウスにおける有意な産生上昇は認められず、腫瘍発生の誘導に関連するというよりも腫瘍から結果的に産生されている可能性が考えられた。同様に制御性T細胞とBリンパ腫の発症との関連も今のところ認められていない。そこで、次年度以降は初年度で行った生後1年以内のマウス(♂並びに♀)B細胞においてHCVが誘導する宿主因子の修飾をマイクロアレイ解析の結果から解明していく。また、HCVによる宿主因子の修飾に性差があれば、それを明らかにする。さらに、同時に行ったBリンパ腫発症RzCD19Creマウス(♂並びに♀)の腫瘍と、腫瘍を持たない同年齢のRzCD19CreマウスのB細胞由来のRNAを比較解析したマイクロアレイの結果から、Bリンパ腫発症に関与するシグナル伝達経路の解析、また性差による違いの有無を明らかにする。これらに加え、共同研究を通じてがん抑制因子A20のHCV関連Bリンパ腫発症における役割とその詳細な機序を解明していく。B細胞でHCVによって発現修飾されるmicroRNAやBリンパ腫の発症に関連するmicroRNAについても、共同研究で解析を進める予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
1。物品費 100万円(マイクロアレイ解析の結果を検証するためのsiRNAやウェスタンブロッティングなど分子生物学用研究試薬や、チューブ、チップ等のプラスチック製品の購入に60万円を計上する。また、細胞培養用の培地やチューブ、チップ等のプラスチック製品の購入に40万円を計上する。)2。その他(マウスの飼育費に20万円を計上する。)
|