研究課題/領域番号 |
23590548
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
前田 洋助 熊本大学, 生命科学研究部, 准教授 (30284764)
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研究分担者 |
吉村 和久 国立感染症研究所, その他部局等, その他 (60315306)
原田 信志 熊本大学, その他部局等, 教授 (60173085)
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キーワード | HIV-1 / CCR5 / オリゴマー / モノマー |
研究概要 |
HIV-1の補助受容体であるCCR5は細胞表面上でダイマーやホモオリゴマーを形成して多様な構造をとっていることが知られているが,HIV-1がどのようなCCR5の構造を認識して細胞内に侵入するかについてはわかっていない。そこでまずCCR5のホモダイマーやオリゴマーを検出する方法としてCCR5分子とそれぞれN末端とC末端に分断された蛍光タンパク質(Kusabira Green, KG)とのキメラ分子を作製し,両分子が近接した時にのみ蛍光を発するBimolecular fluorescence complementation (BiFC)にてCCR5のホモオリゴマーをフローサイトメーターを使用して検出する方法を開発した。さらに認識するエピトープが異なる種々のCCR5抗体で細胞を染色し,KG陰性すなわちモノマーを発現している細胞集団とKG陽性すなわちオリゴマーを発現している細胞集団に対するそれぞれの抗体の反応性を比較した。その結果ホモオリゴマー化したCCR5はモノマーCCR5と立体構造が異なることが判明した。そこでHIV-1はモノマーとオリゴマーのどちらを認識して細胞内に侵入するかを明らかにするため,両分子をCD4陽性の293Tに発現させた後,KG陽性とKG陰性細胞集団をフローサイトメトリーを使用して分取し,それぞれの細胞集団にCCR5を認識して細胞内に侵入するHIV-1を感染させ,どちらの細胞集団がよりHIV-1に対して感受性が高いかについて解析した。その結果,HIV-1はKG陰性細胞集団に効率よく感染することが判明し,CCR5を利用するHIV-1はモノマーCCR5を強く認識して細胞侵入を果たしていことことが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
CCR5が一部オリゴマー化していること,さらにはHIV-1がモノマーCCR5を強く認識して細胞内に侵入していることを培養細胞レベルでCCR5を過剰発現させた時には確認することができたが,この現象が個体レベルでおこっているかどうかについては明らかでない。末梢リンパ球やマクロファージ細胞を使用した実験が必要と考えている。
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今後の研究の推進方策 |
末梢リンパ球やマクロファージでCCR5がオリゴマー化されていることを,電気泳動ならびにWestern blotを行い,CCR5の抗体でモノマーならびにオリゴマーを検出する方法を確立する。さらにはウイルス粒子を蛍光分子でラベルし,単一細胞レベルでウイルス粒子とCCR5のオリゴマー分子との関係を共焦点レーザー顕微鏡を使用して明らかにする。 また今回はCCR5に焦点を絞り研究を行ったが,CXCR4を補助受容体として利用するHIV-1が,CXCR4のモノマーとオリゴマーのどちらを強く認識しているのかについてはいまだ不明である。さらに,HIV-1は一般に病態の進行とともにCCR5からCXCR4へシフトしていくことが知られているが,この進化の過程におけるCCR5とCXCR4のオリゴマーおよびモノマー認識との関係性についても明らかにしていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
培養細胞株でCCR5を過剰発現させた系においてはCCR5のオリゴマー形成とHIV-1感受性との関係をほぼ明らかにすることができたが,末梢リンパ球やマクロファージ細胞でのオリゴマー形成とHIV-1感受性については未だ未解決である。またウイルスの蛍光ラベルによる可視化についての計画は今のところ成功していない。 ウイルスの可視化とオリゴマー化したCCR5との関係について明らかにする。また末梢リンパ球やマクロファージにおけるCCR5のオリゴマー化についても検討する。
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