研究課題
HIVのコレセプターであるCCR5は細胞表面上で種々の構造をとることが知られている。この一つの要因としてCCR5どうしの2量体さらには多量体形成による構造の違いが考えられる。一方HIV-1はCCR5のある特定の構造を認識して細胞に侵入することから,本研究ではCCR5の多量体形成がHIV-1の細胞侵入に与える役割について検討した。方法としてはKusabira Green (KG)と呼ばれる蛍光タンパク質をN末端 (KGN)とC末端 (KGC)に分断し,それぞれの分子をCCR5のC末端に結合させたキメラ化分子を作製し,これら2つの分子が近接して会合した時にのみKGとして蛍光を発するBiFC法を用いてCCR5どうしの多量体化を検出し,その立体構造の単量体との違いをCCR5の種々のエピトープを認識する抗体で染色し,フローサイトメトリーを使用して解析した。その結果CCR5単量体と多量体ではその構造が異なることが判明し,またCCR5を利用して細胞内に侵入するHIV-1は主に単量体を認識して細胞内に侵入することが明らかとなった。さらにCCR5に結合してHIV-1の感染を阻害するCCR5阻害剤(CCR5拮抗剤)は,CCR5どうしの多量体化を促進することが明らかとなり,CCR5阻害剤はCCR5への結合によるHIVの感染阻害のみならず,CCR5の多量体化による構造変化もその感染阻害機構として寄与していることが示唆された。一方でCCR5阻害剤耐性ウイルスはCCR5阻害剤が多量体化を促進するにも関わらず,CCR5阻害剤が結合したCCR5単量体を認識して細胞内に侵入することから,CCR5を使用して細胞内に侵入するHIV-1には多量体化したCCR5を認識するように変異していく能力がないことを示した。このことはCCR5多量体化を促進する薬剤の治療への応用の可能性を示唆している。
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