研究課題/領域番号 |
23590555
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研究機関 | 国立感染症研究所 |
研究代表者 |
葛西 正孝 国立感染症研究所, 免疫部, 研究員 (10142134)
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研究分担者 |
深澤 征義 国立感染症研究所, 細胞化学部, 室長 (20291130)
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キーワード | Translinタンパク質 / TRAXタンパク質 |
研究概要 |
本研究の最終目的は、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus, HCV)の持続感染成立に関わる分子機構の一端を明らかにすることである。申請者らが発見したDNA, RNA結合タンパク質であるTranslinおよびその類似タンパク質であるTRAXは複合体を形成し、miRNA(siRNA)の取り込み・相補的RNAの切断に関わるRISC (RNA-induced silencing complex)の構成タンパク質となることが明らかにされ注目されている。そこで本研究では、RNAウイルスであるHCV持続感染において、Tarnslin/TRAXの関与するRNA干渉(RNAi)の役割に着目して検討を行うことを計画している。昨年度までに、TRAX分子単独では肝培養細胞内で存在できないこと、Translinと複合体を形成できないとプロテアソーム分解系によりタンパク質レベルで分解を受けることを明らかとした。本年度はまず、様々なTRAX欠損変異体を作製し、分解に重要な部位の検討を行った。その結果、TRAXのC末領域が分解に重要であることがわかった。しかし、C末領域のリジン残基すべてに変異を入れた場合でもプロテアソーム依存性の分解が見られたことから、ポリユビキチン化とは異なるメカニズムが関与している可能性が考えられた。TRAX分子の細胞内制御系については更なる検討が必要と考えている。抗TRAX抗体については、上記の検討を進めるためにもC末端以外にN末端側を認識する抗体が必要と考え、当該ポリクローナル抗体を樹立した。 また、HCV感染が可能である複数のヒト肝培養細胞系を用いて、TRAX分子のsiRNAによるノックダウンを行いHCV感染・増殖を検討した結果、すべての場合で有意にHCV増殖が抑制された。そこでTRAX分子に注目し、HCV増殖との関連を当該培養系を用い今後さらに検討していきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
TRAX分子が単独ではヒト肝細胞内で極めて不安定であり、その量が厳密に制御されていることが明らかとなり、本研究課題を実行するためには、まずこのメカニズムを明らかにする必要があると判断し検討を進めているところである。しかし、本年度の検討からそのメカニズムは単純ではなく、従来のポリユビキチン化を介したプロテアソーム分解とは異なるメカニズムが示唆され、さらに詳細な解析が必要となっている。RNA干渉制御機構の理解のためにも極めて根本的で重要な問題でもあり、この点についてもう少し検討したいと思っている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、TRAXタンパク質の量的制御メカニズムの詳細をさらに解析しつつ、当該研究計画であるHCV増殖との関連について推進する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
HCV感染細胞培養系のための細胞培養用経費が30万円程度、HCV感染の検出・確認のための生化学的試薬に30万円程度・分子生物学的試薬に40万円程度を予定している。研究発表や研究情報収集・交換のための旅費に25万円程度、その他の文献代や実験補助の謝金に30万円程度を予定している。
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