研究課題
本研究の最終目的は、C型肝炎ウイルス(hepatitis C virus, HCV)の持続感染成立に関わる分子機構の一端を明らかにすることである。申請者らが発見したDNA, RNA結合タンパク質であるTranslinおよびその類似タンパク質であるTRAXはTranslin/TRAX複合体を形成し、miRNA(siRNA)の取り込み・相補的RNAの切断に関わるRISC (RNA-induced silencing complex)の構成タンパク質となることが明らかにされ注目されている。そこで本研究では、RNAウイルスであるHCV持続感染において、Tarnslin/TRAXの関与するRNA干渉(RNAi)の役割に着目して検討を行うことを計画した。これまでに、1)TRAX分子単独では肝培養細胞内で存在できないこと、2)TRAXはtranslinと複合体を形成しており、単独ではプロテアソーム分解系によりタンパク質レベルで分解を受けること、3)様々なTRAX欠損変異体をを用い分解に重要な部位の検討を行った結果、TRAXのC末端領域が分解に重要であることがわかった。一方、TRAXはユビキチン化を受けるものの、C末領域のリジン残基すべてに変異を入れた場合でもプロテアソーム依存性の分解が見られたことから、ユビキチン非依存的に分解できることもわかった。この現象は,肝細胞以外の複数の細胞でも観察された。このことからTRAXはユビキチン非依存的なプロテアソーム分解の性状を解析するツールとして有望であると考えられた。HCV感染が可能である複数のヒト肝培養細胞系を用いて、TRAX分子のsiRNAによるノックダウンを行いHCV感染・増殖を検討した結果、当初すべての場合で有意にHCV増殖抑制が見られたが、複数のsiRNAコンストラクトを検討した結果、TRAXの発現低下を示すものの有意なHCV増殖抑制が見られないものも存在した。また、TRAX/translinの共発現による効果も検討したが、HCV増殖に有意な変化は見られなかったため、今後さらに詳細な検討を加える予定である。
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