研究課題
ヒトノロウイルス(HuNoV)のリバースジェネティックスシステムは、HuNoVの細胞内におけるゲノム翻訳から蛋白質産生、ゲノム複製、新生粒子(progeny virus virion; PVP)に至る行程を再現できる。本研究では、ヒトノロウイルス(HuNoV)のリバースジェネティックスシステムを用いたHuNoVの病原性発現機構、抗ウイルス薬開発の基盤となるウイルス蛋白質の細胞内動態、機能解明を目指す。平成23年度は以下の研究を実施した。(1)HuNoV蛋白質のウイルス複製における細胞内局在と機能の研究HuNoVのゲノムにはORF1, 2, 3が存在する。ORF1は6-7種類の非構造蛋白質コードされている。ORF2, 3には構造蛋白質がコードされている。非構造蛋白質の細胞内でのプロセッシングは、現在までの検討からほぼ明らかになっている。プロセッシングマップに従って、各種蛋白質のN末端, C末端に蛍光蛋白質でラベルするため、全長cDNAクローン;pKSFの標的領域にGFP等の蛍光蛋白質遺伝子を導入し、各種ウイルス蛋白質の細胞内動態を可視化観察を試みた。GFPを導入した場合、プロテアーゼによるGFPの直前、直後の切断が性状に起こらないことが明らかになった。プロテアーゼ認識配列の前後の4~6アミノ酸モチーフを導入する必要がある。(2)NoVにコードされるウイルス蛋白質の発現と細胞への影響の研究ゲノム上にコードされる各種ウイルス蛋白質を細胞内で単独発現させ、細胞に与える影響を観察する。各種ウイルス蛋白質の発現ベクターへのクローニングを行い、細胞内での発現を免疫系光線色によって確認した。(3)HuNoVのリバースジェネティックスに用いているpKSベクターに、MuNoV, FCVの全長cDNAをクローニングた。
3: やや遅れている
導入した蛍光物質(GFP)直前、または直後のウイルスプロテアーゼによる正常な切断が起こらないことが明らかになった。各種ウイルス蛋白質の細胞内での動態を観察するためには、ウイルスの複製サイクルを再現する必要があり、少なくとも全ての蛋白質切断が正常に起きる必要がある。現状では、正常な切断が起きない不完全なプレカーサー蛋白質を観察することとなる。その他は、順調に進行している。切断点前後4アミノ酸以上の配列を切断点に導入すれば、正常な切断が起きることが明らかになったため、新たに全長クローンのコンストラクションを行い、ポリプロテインの切断を確認する必要がある。
本年度の研究で、切断点前後4アミノ酸以上の配列を切断点に導入すれば、正常な切断が起きることが明らかになったため、新たに全長クローンのコンストラクションを行い、ポリプロテインの切断を確認する。成功した場合、GFPの他の蛍光蛋白質遺伝子やタグ蛋白質遺伝子を、プロセッシングマップに従って導入し、ウイルス蛋白質同士のインタラクションや、宿主蛋白質とのインタラクションを免疫沈降などの手法を用いて調べる。また、細胞構造への影響は、オルガネラ特異的抗体、色素などを用い、構造変化を追跡する。細胞に影響を与える蛋白質領域が特定された場合、全長cDNAクローン;pKSF上の標的ウイルス蛋白質のミュータントを作製し、リバースジェネティックスシステムでその動態変化を観察する。得られた結果は、病原性発現機構解明への手がかりとなる。構築に成功したMuNoV、FCVのリバースジェネティックスシステムで、HuNoVの系を検証すると共に、HuNoVでは観察できない感染性ウイルスの細胞への吸着から侵入、脱殻までを観察する。レポーター遺伝子の挿入に成功すれば、ライブセルイメージャーLCV110を用いて経時的に細胞への侵入を可視化する。
コンストラクションを進行させため、主に、遺伝子人工合成を利用する。蛋白質解析のための基本的な消耗品を購入する。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件) 学会発表 (2件)
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