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2012 年度 実施状況報告書

ヒトノロウイルスの病原性発現機構の研究

研究課題

研究課題/領域番号 23590556
研究機関国立感染症研究所

研究代表者

片山 和彦  国立感染症研究所, ウイルス第二部, 室長 (60342903)

キーワード病原性 / 細胞内動態 / 機能
研究概要

リバースジェネティックスシステムを用い、HuNoVの複製機構と病原性発現機構について研究する。本システムは、HuNoVのポリプロテイン翻訳から粒子形成に至る全ての行程を細胞内で再現できる。本研究では、HuNoVの病原性発現機構、抗ウイルス薬開発の基盤となるウイルス蛋白質の細胞内動態、機能解明を目指している。
(1)HuNoV蛋白質のウイルス複製における細胞内局在と機能の研究
HuNoVのゲノムにはORF1, 2, 3が存在する。ORF1は6-7種類の非構造蛋白質コードされている。ORF2, 3には構造蛋白質VP1, VP2がコードされている。昨年、GFPなどの蛍光タンパク質で非構造タンパク質をラベルするためには、プロテアーゼ認識配列の前後の4~6アミノ酸モチーフを導入する必要があることを明らかにした。本年度は、NTPaseと3A-like proteinの間にGFPを挿入し、3A-like proteinをラベルすることに成功した。
(2)NoVにコードされるウイルス蛋白質の発現と細胞への影響の研究
3A-like proteinを単独で発現させると、細胞の小胞輸送システムに強いダメージを与え、細胞内タンパク質輸送がERとゴルジの間でスタックすること、アポトーシスが誘導されることを見いだした。また、N-terminal proteinは、小胞体と共局在することを明らかにした。
(3)MuNoV, FCVの非感受性細胞であるHEK293TにpKS-MuNoV, pKS-FCVをトランスフェクションすることで、感染性ウイルスを産生させることに成功した。pKS-MuNoVのVPgにMet残基を導入し、感染性MetミュータントMuNoVを作出した。HEK293Tから産生された感染性MuNoV, FCVは、それぞれの感受性細胞で5代継代後も、クローンと同一の配列を示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

蛍光物質(GFP)をウイルスゲノムに導入した場合、GFPの直前、後のウイルスプロテアーゼによる切断が起こらないことがある。この場合、ウイルスの複製行程に何らかの障害が生じ、ウイルスの細胞内動態のリアルタイムイメージングが難しくなる。この現象は、切断点前後4アミノ酸以上の配列を導入すると改善されることもあるが、改善されない場合もある。導入部位によっては、GFP等の外来性タンパク質導入が困難であることが明らかになった。HuNoVゲノムにおける外来性タンパク質の挿入可能なサイトのスキャンを行ったところ、3A-like protein, VP2に10アミノ酸程度の挿入が可能サイトがあることが明らかになった。His-Tag, Tetracystain-Tagの導入を試みたが、いずれも感染性粒子の放出はできなかった。難航するHuNoVを離れ、サロゲートウイルスであるMuNoV, FCVのリバースジェネティックスシステムの構築に成功した。特にMuNoVでは、VPgにメチオニン残基を導入したミュータントクローンから感染性MetミュータントMuNoVの作出に成功した。この過程で、感染性粒子作出にリーサルなアミノ酸座位も発見した。このようなサロゲートウイルスクローンと、感受性細胞におけるウイルス感染増殖の比較検討から、本研究課題の研究目標の実現に迫ることができる。最終年度は、MuNoVへの変異導入、MuNoVとHuNoVのキメラウイルスの作出により、HuNoVの各種タンパク質の機能と病原性の解析を推進する。

今後の研究の推進方策

HuNoVのサロゲートウイルスであるMuNoV, FCVを用いたHuNoVとの比較検討を先行させる事とした。FCVに比べ、よりHuNoVに近縁なMuNoVのリバースジェネティックスシステムと、RAW細胞を用いた感染増殖システムを用い、各種タンパク質の細胞内動態を免疫蛍光抗体法によって観察し、HuNoVのそれと比較検討することで改善を図る。また、昨年度より、HuNoVとMuNoVの外来性遺伝子の挿入可能部位の検索、変異導入の可能性を探った結果、幾つかの候補領域、座位が決定された。逆に、感染性粒子作出にリーサルな領域、座位も特定されつつある。特に、サロゲートウイルスにおける変異導入は、実際の感染性ウイルスの細胞内動態をリバースジェネティックスと比較するために、有用かつ実用性が高く、HuNoVの病原性発現機構解析に利用できる。最終年度は、HuNoVにおいて機能を解析したN-terminal protein, 3A-like proteinへ変異を導入しHuNoVのリバースジェネティックスにおける細胞内動態を調べるとともに、サロゲートウイルスであるMuNoVにも同様の変異を導入して比較検討する。また、すでに作出に成功した感染性MetミュータントMuNoVを用いて、VPgタンパク質の機能と病原性発現機構への関与を調べる。MuNoVのリアルタイムイメージングのため、N-terminal protein, 3A-like proteinにGFPラベルした感染性ミュータントウイルスの作製も試みる。

次年度の研究費の使用計画

変異導入を行うための遺伝子合成、培養細胞維持のための培地、フラスコ、遺伝子導入のためのトランスフェクション試薬、アポトーシスのリアルタイムモニター用試薬など消耗品購入と、学術成果の発表のための旅費、論文掲載料に当てる。

  • 研究成果

    (11件)

すべて 2012

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Structural Basis for Broad Detection of Genogroup II Noroviruses by a Monoclonal Antibody That Binds to a Site Occluded in the Viral Particle2012

    • 著者名/発表者名
      Grant S. Hansman, David W. Taylor, Ivelin Georgiev, Jeremy R. H. Tame, Sam-Yong Park, Makoto Yamazaki, Fumio Gondaira, Motohiro Miki, Kazuhiko Katayama, Kazuyoshi Murata, and Peter D. Kwong.
    • 雑誌名

      Journal of virology

      巻: 86 ページ: 3635-3646

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Secretory pathway antagonism by calicivirus homologues of Norwalk virus nonstructural protein p22 is restricted to noroviruses.2012

    • 著者名/発表者名
      yler M Sharp, Sue E Crawford, Nadim J Ajami, Frederick Neill, Robert L Atmar, Kazuhiko Katayama, Budi Utama, Mary K Estes.
    • 雑誌名

      Virology Journal

      巻: 9;181 ページ: 1-5

    • DOI

      doi:10.1186/1743-422X-9-181

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Structural basis for specific recognition of substrates by sapovirus protease.2012

    • 著者名/発表者名
      Masaru Yokoyama, Tomoichiro Oka, Hirotatsu Kojima, Tetsuo Nagano, Takayoshi Okabe, Kazuhiko Katayama, Takaji Wakita, Tadahito Kanda and Hironori Sato.
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 3; 312 ページ: 1-10

    • DOI

      doi: 10.3389/fmicb.2012.00312

    • 査読あり
  • [雑誌論文] In silico 3D structure analysis accelerates the solution of a real viral structure and antibodies docking mechanism.2012

    • 著者名/発表者名
      Motohiro Miki and Kazuhiko Katayama.
    • 雑誌名

      Frontiers in Microbiology

      巻: 3:387 ページ: 1-6

    • DOI

      doi: 10.3389/fmicb.2012.00387

    • 査読あり
  • [学会発表] Visualization of Murine Norovirus proteins and its genome RNA2012

    • 著者名/発表者名
      Shimoike T, Todaka R, Murakami K, Takagi H, Park Y, Fujii Y, Wakita T and Katayama K.
    • 学会等名
      American Society for Cell Biology
    • 発表場所
      San Francisco
    • 年月日
      20121215-20121219
  • [学会発表] Development of plasmid based reverse genetics system that can drive MNV and FCV genome by human promoter EF-1α2012

    • 著者名/発表者名
      Todaka R, Murakami K,Oka T, Takagi H, Park Y, Fujii Y, Wakita T, Nakanishi A, Katayama K.
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] Screening for candidate receptor on Caco-2 involved in norovirus binding by mass spectrometry from different approaches2012

    • 著者名/発表者名
      Murakami K, Oka T, Shimoike T, Fujii Y, Park Y, Todaka R, Wakita T, Matsuda T, and Katayama K.
    • 学会等名
      日本分子生物学会
    • 発表場所
      福岡
    • 年月日
      20121211-20121214
  • [学会発表] カリシウイルスのユニバーサルなプラスミドベースリバースジェネティックスシステム2012

    • 著者名/発表者名
      戸高玲子、村上耕介、岡智一郎、高木 弘隆、朴英斌、下池貴志、藤井克樹、脇田隆字、中西章、片山和彦
    • 学会等名
      日本ウイルス学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20121113-20121115
  • [学会発表] パンデミックノロウイルスの変化の制約2012

    • 著者名/発表者名
      佐藤裕徳、本村和嗣、横山勝、椎野禎一郎、中村浩美、岡智一郎、片山和彦、野田衛、田中智之、Norovirus Surveillance Group of Japan
    • 学会等名
      日本ウイルス学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20121113-20121115
  • [学会発表] ノロウイルスのCaco-2細胞への結合に関与するタンパク質の探索2012

    • 著者名/発表者名
      村上耕介、岡智一郎、下池貴志、藤井克樹、Park YoungBin、戸高玲子、脇田隆字、松田幹、片山和彦
    • 学会等名
      日本ウイルス学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20121113-20121115
  • [学会発表] マウスノロウイルス感染細胞内のウイルス蛋白質とそのゲノムRNAの局在2012

    • 著者名/発表者名
      下池貴志、戸高玲子、村上耕介、岡智一郎、高木 弘隆、朴英斌、藤井克樹、脇田隆字、中西章、片山和彦
    • 学会等名
      日本ウイルス学会
    • 発表場所
      大阪
    • 年月日
      20121113-20121115

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公開日: 2014-07-24  

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