研究課題
EV71の感染受容体として報告された2つの分子SCARB2とPSGL1のEV71感染受容体としての機能を比較した。1.可溶型感染受容体によるウイルス構造の変化ウイルス粒子からのゲノムRNAの放出を解析するために、RIでラベルした精製ウイルス粒子と可溶型感染受容体SCARB2-FcとPSGL1-FcをそれぞれpH=7.4、6.0および4.5の条件下で、37度で1時間反応させた。その後、ウイルスの構造変化をショ糖密度勾配超遠心により調べた。SCARB2-Fcとウイルス粒子をpH=7.4の条件下で反応させてもウイルス粒子の構造変化は確認されなかったが、pH=6.0および4.5ではウイルス粒子の一部が軽いフラクションへとシフトしていた。その軽いフラクションへシフトしていたウイルス粒子内のRNA量を計測したところ、ウイルスRNA量は減少していた。さらに、同じフラクションのウイルス粒子に構造蛋白質VP4があるかをSDS-PAGEにより確認したところ、VP4蛋白質が消失していた。一方、PSGL1-Fcとウイルス粒子を反応させた場合では、どのpH条件でもウイルス粒子の構造変化は確認できなかった。よって、SCARB2がEV71ウイルス粒子の脱殻を誘導していることが示された。2.細胞への取り込み様式を解析EV71の細胞への感染にエンドサイトーシスが必要であることがHussainらによって報告された(JBC, 2011)。そこで、ウイルス粒子が細胞への侵入時に、SCARB2またはPSGL1を介してエンドソーム内へと到達する効率を共焦点蛍光顕微鏡で比較し、SCARB2を介した感染の方が、PSGL1を介した感染よりも、効率良くウイルス粒子がエンドソームに運ばれていた。以上より、SCARB2はEV71の機能的な感染受容体であること、またPSGL1は結合に働く分子であることが明らかとなった。
1: 当初の計画以上に進展している
当初予定していた主な研究計画に関しては、数々の困難な局面を打開しつつ、ほぼ終了したといえる段階まで来た。
今後は、残された未同定の感染受容体分子の機能解析を行い、その機能をSCARB2やPSGL1と比較することが出来れば良いと考えている。
該当なし。
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Journal of Virology
巻: 87 ページ: 3335-3347
10.1128/jvi.02070-12
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