エンテロウイルス71感受性であるヒトRD細胞のゲノムDNAを低感受性であるマウスL929細胞に導入し、EV71感受性を得たマウス細胞を2株(Ltr051細胞とLtr246細胞)樹立している。Ltr051細胞のEV71感受性は、EV71の感染受容体SCARB2によってもたらされていた。Ltr246細胞に発現する未同定の感染受容体の同定には至っておらず、Ltr246細胞を用いた間接的な性状解析は行われていない。そこで本年度は、Ltr246細胞に存在する未同定のエンテロウイルス71感染受容体の性状解析をLtr246細胞を用いて行った。 まず、Ltr246細胞に発現している未知の感染受容体が、様々なエンテロウイルス71の感染を促進する役割を果たすことが出来るかを確認するため、8株のエンテロウイルス71をLtr246細胞、L929細胞およびRD細胞にMOI=5で感染させ、細胞変性効果が出現するかどうか観察した。その結果、Ltr246細胞に細胞変性効果を誘導できるウイルス株は一部に限られ、大半のウイルスは細胞変性効果を誘導できなかった。次に、Ltr246細胞におけるエンテロウイルス71の増殖性を検討するため、8株のエンテロウイルス71をLtr246細胞、L929細胞およびRD細胞にMOI=0.01で感染させ、時間を追ってウイルス力価を測定した。その結果、1株はLtr246細胞とRD細胞で同程度に増殖したが、他の7株のLtr246細胞での増殖はRD細胞よりも劣っていた。以上より、Ltr246細胞に発現する未同定のエンテロウイルス感染受容体は、一部のエンテロウイルスの感染を促進する分子であることが明らかとなった。また、この分子はエンテロウイルス71の感染初期過程において、中心的な役割を果たすものではないことが分かった。
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