研究課題/領域番号 |
23590558
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
松本 美佐子 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (30332456)
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キーワード | 自然免疫 / Toll-like receptor / ウイルス感染 / RNA / エンドサイトーシス / 炎症応答 / インターフェロン / 細胞死 |
研究概要 |
微生物特有の分子パターンを認識するレセプターであるToll-like receptor 3 (TLR3)は、細胞外に存在するウイルス由来のdouble-stranded (ds) RNAをエンドソームで認識し、type I IFNや炎症性サイトカイン産生などの抗ウイルス応答を誘導する。一方TLR3は、dsRNAを生じないウイルス感染や非感染性のネクローシス細胞も検知し炎症応答を誘導することが報告されているが、どのようなRNAを認識するか不明である。本研究において、TLR3は安定な構造をとるウイルス由来のsingle-stranded RNA(structured RNA)を認識することを明らかにした。ポリオウイルス(PV)ゲノム断片のcDNAをもとに、ds/ssRNAsをin vitro転写合成しTLR3活性化能を調べた結果、TLR3はdsRNA以外にいくつかのPV由来のssRNA (PV-ssRNA)を認識することが判明した。これらPV-ssRNAsは、ヌクレアーゼ抵抗性の安定な構造をとっており、dsRNA同様にRaftlin 依存的エンドサイトーシスで細胞内に取り込まれ、ヒト繊維芽細胞や上皮細胞、マウスマクロファージや樹状細胞のTLR3を活性化しタイプIインターフェロンや炎症性サイトカイン産生を誘導した。コンピューター解析によるRNA二次構造予測とdsRNA領域のマッピング実験から、PV-ssRNAは不完全なdsRNA領域を有することがわかり、TLR3はこの領域を認識することで多様なウイルス感染に対応すると考えられた。Structured RNAはウイルス感染細胞のみでなく非感染性のネクローシス細胞からも放出され炎症応答を誘導すると考えられ、取り込み機構とTLR3シグナル制御機構の解明が重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1. 申請者らは種々のウイルス感染系、TLR3リガンドのスクリーニング系、細胞外核酸の取り込み経路の解析方法、in vitro RNA転写合成技術などを保有し方法を確立しているため、TLR3を活性化するウイルスRNA構造の同定に成功したと考えられる。 2.他の研究部門あるいは研究機関の研究者からの協力を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
細胞外RNAの取り込みレセプターを同定し、取り込みとエンドソームTLR3への輸送機構を明らかにする。Poly(I:C), structured RNA, 新規RNAアジュバントRNA Xは共通の取り込みレセプターを介してRaftlin 依存的にエンドサイトーシスされることから、Raftlinを用いた共免疫免疫沈降法あるいは核酸を用いたタンデムアフィニティー精製により、取り込みレセプターを精製する。CD14とSR-Aを発現していないヒト細胞の細胞膜画分を出発材料とする。質量分析は北大先端生命科学研究院の小布施研究室と共同で行う。また、Raftlinの機能解析のためにRaftlin-2のノックアウトマウス作製を進め、Raftlin/Raftlin-2ダブルノックアウトも作製し、個体レベルでの細胞外RNA取り込みとTLR3を介した応答を解析する。
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次年度の研究費の使用計画 |
Raftlin-2ノックアウトマウス作製費 取り込みレセプターの機能解析にかかる試薬、消耗品費 論文の別刷り費用などに使用予定である。
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