研究概要 |
核酸認識Toll-like receptors (TLRs) 3, 7, 8, 9は細胞特異的に発現し、外来あるいは自己由来の核酸を認識して自然免疫応答を惹起する。いずれも細胞内オルガネラに局在するため通常は自己核酸を認識しないが、感染や炎症で細胞外に放出された核酸をアラーミンとして認識し炎症応答を誘発する。TLRsによって認識される核酸の構造は、二本鎖RNAのようにウイルス特有の構造やCpGモチーフなどあるが配列には依存せず、いずれのTLRも自己の核酸を認識できるしくみを有していると考えられる。B細胞と形質細胞様樹状細胞に発現するTLR7とTLR9は、エンドリソソームで細胞外領域が切断され機能的レセプターとなる。一方、TLR7,9と同じサブファミリーに属するTLR8は、ヒトにおいて単球、マクロファージ、骨髄系樹状細胞に発現しており、ウイルス由来のssRNAや自己のmicroRNAなどを認識し炎症性サイトカイン産生を誘導するが、核酸認識のしくみは不明である。本研究では、ヒトTLR8によるssRNA認識機構を明らかにした。TLR8は単球、マクロファージにおいて切断されており、N末側断片とC末側断片が非共有結合で会合した形で存在することが判明した。細胞外ドメインを構成する26個のLRRのなかでLRR14とLRR15の間の loop構造が切断に必須であり、リガンドであるssRNAはN末側断片とC末側断片の両方に結合することが明らかとなった。TLR8の切断はN末側断片で2段階におこり、C末側断片がトリミングされるTLR7,9と異なっていた。TLR8は初期/後期エンドソームに局在し、エンドリソソームに局在するTLR7,9と異なる様式で切断されssRNA認識能を獲得し炎症性サイトカイン産生のシグナル伝達をすると考えられ、シグナル伝達の場としてのエンドソームの機能解明が重要な課題である。
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